土地値アパート投資の意外な難しさ 長期保有は結構難しい

土地値アパートというものは、いつの時代も人気があるものです。

確かに魅力的な投資対象で、私もいくつか保有したいとは思うものの、
設定を間違えると意外と保有しづらいという点もあります。

特に、長期保有を前提とするなら、事前の準備が重要といえます。

土地値物件の魅力

土地値物件の魅力は、やはり土地としての価値があるところといえます。

日本では建物の価値はいくら大規模修繕やリフォームをしようと、経年と
ともに劣化していくという大前提があります。
いくら新築レベルに修繕していても、築年数という単純計算にはかないません。
これは、日本人の新築大好き姿勢、国の新築支援政策、金融機関の法定耐用年数
を異様に重視する姿勢などいくつかの要因によるものでしょうが、ウワモノが
そのように評価されるという現実があります。

一方で、土地の価値は、経年とともに劣化しません。

この点に、日本における特殊な土地の価値があります。

もちろん、現在地方では土地が何の価値も持たないという現実はあります。
私の実家の近所など、いくら田舎とはいえ、1坪5千円でも買い手が付きません。

こうなると、土地と言っても意味はありませんが、首都圏や市街地など、
建物の需要のある土地であれば、十分に価値があると言えるでしょう。

土地値物件の保有は戦いだ

しかし、土地値物件は、資産価値がある一方で、意外と長期保有に苦労
することがあります。

そのような点も十分に押さえておきたいものですね。

建物割合低く、減価償却費が少ない

通常、土地値アパートとは、築古物件を指します。

建物の価値が築年数とともに減少し、結果土地値で物件が売りに出される
からで、築浅の土地値物件というのは基本的にありません。
(余程の掘り出し物であればあるのかもしれませんが…)

このため、必然的に、売買価格に対する土地建物の割合に一定の傾向が出ます。

それは、土地の割合が非常に高くなりがちという点です。

実際、都内の築25年のアパートなどなら、土地割合が9割を超えることすら
あります。

また、埼玉や千葉の物件であっても、土地割合は7割程度は必ずあるイメージ
ですね。

これによって何が起きるかと言うと、土地値アパートは減価償却費を
取りづらいのです。
その結果、税引前キャッシュフローの大半を納税資金に充当する必要が
あるケースも決して珍しくはありません。

もちろん、減価償却はあくまで税金を今払うか売るときに払うかの違い
であって、手元に現金が残らなくとも元金の返済によって純資産は改善
しています。

この傾向が本当に顕著なので、築古アパート投資でキャッシュフローを
潤沢に手に入れたいという場合、土地値は逆に邪魔になります。

しかし、意外と手残りが少ないと不満に思っている方も多いのです。

償却期間が短いことによるデッドクロスの苛烈さ

築古の建物は、減価償却期間が短くなりがちです。

税務上、中古物件には以下のような中古資産の耐用年数を
適用することが一般的です。

法定耐用年数-築年数+築年数×0.2
(築年数が法定耐用年数を超過している場合は、法定耐用年数×0.2)

例えば、築21年の木造アパートはどうなるかと言うと、
22-21+21×0.2=5年

となります。

するとどうなるかといいうと、保有6年目以降は、減価償却費が全くの
ゼロになってしまうのです。

減価償却費がゼロになると、かなりキツいデッドクロスになるので、
何らかの対策を取らない限り保有し続けることは難しい可能性もあります。

このあたりも、長期保有を前提とする場合、何らかの対策を考える必要
があるでしょう。

土地利息の経費計上制限による経費垂れ流し

これは個人で物件を保有する場合に発生することですが、
不動産所得が赤字となった場合、借入金のうち、土地に対応する借入金から
生じた利子の支払いを経費にすることができないという規定があります。

一方、土地値アパートは築古であることが多く、一般的に金利の低い銀行
から融資を受けることは難しい傾向にあります。

このため、このような物件を購入する際には、金利の高い一部地銀や
ノンバンクから融資を受けることになりがちなので、そもそも金利負担が
大きくなりやすい傾向にあることは間違いありません。

また、土地値が出ているということは、借入金に占める土地の割合が高い
ということでもあります。

するとどうなるかと言うと、不動産所得が赤字になっても、利子が経費にならず
結局プラスマイナスゼロとなるケースは非常に多いです。

これは、前述の減価償却に短いケースと組み合わされると非常に危険です。

土地としての価値を重視するなら、長期保有できる体制を

何が起こるか理解して、長期保有できるようにしよう

多くの方が、表面利回りや立地や土地値で以て、結構直感的に
不動産の購入を決断しています。

しかし、不動産の収支計算とは融資条件や税金対策によって大幅に
変動するものです。

いまこの物件を購入する場合は、どのような融資条件なら良いのか、
どのような税金対策をすればよいのか、そのようなことを最初に
考えておく必要があります。

というのも、これらはすべて、物件を購入したあとでは変更できないこと
が非常に多いからです。

土地値アパート投資の魅力は、最後に土地が残ることでしょう。
その魅力を最大限に活かすためには、ある程度の期間保有する必要があります。

土地値アパートをせっかく購入したのに、5年目でキャッシュフローが回らず
手放さざるを得ない状況に追い込まれる自体は避けたいところです。

このためには、購入する時点でシミュレーションなどを行い、
いつどのような事態が生じるのかを理解し、その事態を避けたいなら
事前に対策を準備する必要があります。

税理士任せにしない

当事務所にご相談に来られるかたで非常に多いのが、決算や申告を
すべて税理士任せにしているけど、なぜかお金が残らないというような方です。

税理士は、適正な税金計算をするのが本来の仕事ですので、今まで書いた
ようなことを意識してはいません。
税法に準拠した確定申告を行うのが税理士の職責であって、その税金
をどうコントロールすべきかまで考えてくれる税理士は多くありません。

結果、築古物件でも土地建物を固定資産税評価額で按分して、減価償却は
4年でして、結果支払った利子のほとんどが経費になっていないし、
すぐにデットクロスが来るしというような方を沢山見てきました。

このような対策は、本来税理士の本職ではありませんし、10万円に満たない
確定申告報酬のためにここまで計算してくれる税理士はいないでしょう。

この部分は、ご自身で理解し、税理士にこうしてくれと注文する必要が
あります。

© 2024 和田晃輔税理士事務所