商品やサービスの質を外見で判断する?シグナリング効果

シグナリング効果をご存知でしょうか?

人間は本質を判断できない場合、その外形を重視して
判断してしまうという傾向のことです。

不動産投資や税理士業界でもこのシグナリング効果を用いた
営業をよく見ます。

別に悪いことではないのですが、少し考えてみましょう。

シグナリング効果とは?

シグナリング効果の定義はいくつかあるようですが、
ここでの定義は以下を採用しましょう。

内容の質が分からない場合、シグナリングが価値判断に大きく影響すること。商品の値段、店の立地、店の人気など価値の高さを示すシグナルが訴求力を持つこと。

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つまり、商品のサービスの質が判断できない場合、その質そのものではなく、

「質が高そうだ」

というシグナルによって、質を判断するというものです。

このシグナリングによって、多くのことが説明されます。

例えば、なぜ企業は高学歴の学生を採用したがるのか。

本来、高学歴であることと、社会人としての優秀さの間に直接的な
関係はないはずです。

しかし、高学歴つまり良い大学を卒業したということは、その人
が高い能力を持っていることの「シグナル」になるのです。

例えば、なぜ生命保険会社や銀行は立派な本社ビルを持っているのか。

本来、生命保険契約の内容や銀行業務の良し悪しと、本社ビルの壮麗さは
何の関係も持たないはずですよね。

しかし、多くの人は本社ビルが壮麗であればあるほど、その
会社がしっかりした立派な会社であり、自分の保険契約も
しっかりしたものに違いないと考えるわけです。

例えば、デキルと噂の保険の営業マンは何故あれほど小奇麗な
見た目をしているのか。

本来その人の売っている保険の良し悪しや能力と、営業マンの外見は
何の関係も無いはずですよね。

しかし、パシッとタイトなブランドスーツを着込み、高級腕時計をつけ、
おしゃれなカフスで袖口を留め、頭をキレイなツーブロックで
きめていると、なんだかその人が有能そうに感じられますし、
あまつさえ保険の内容まで良いものに感じられます。

このように、実際の中身ではなく外見のイメージによって、判断を
することは人間誰しもあるのではないでしょうか。

このように考えてくると、生命保険会社は、自社の信用性を顧客に
示すために、あえて壮麗な本社ビルを保有していると考えられます。
また、営業マンは自身の有能さを示すために、あえて小奇麗な見た目
をしていると考えられます。

特に、実際の商品やサービスの質がよくわからない場合、このように
外見やそこから受ける印象で判断する人間の本性をあえて利用し、
質が高いと見せかけることがシグナリング効果なのです。

不動産投資におけるシグナリング効果

不動産投資においても、営業に際しては多くのシグナリングが
用いられているといえます。

何故かと言うと、「不動産の質を判断できない人が大半」だからです。

これは、自宅を購入しようとする人も、不動産投資家もかわりません。

つまり、不動産も多くの人にとってはその本来の質を判断できないため、
質が高いシグナルの有無によって判断するというわけです。

不動産の質のシグナルとしては、以下のようなものが典型的でしょう。

大規模修繕済

大規模修繕済の物件が通常の相場よりも高く売れるのは周知の
事実でしょう。

今後10年以上は大規模修繕による出費が少なくなるというのは
確かにメリットといえばメリットですが、とはいえ別に大規模修繕
済でなくても、自分で買ってから修繕しても良いわけです。
そのためには、大規模修繕コスト分値下げしてもらうことが大前提
にはなりますが。

ではなぜ多くの業者が大規模修繕してから物件を売りに出すのか。

もちろん瑕疵担保責任を負っているという点もありますが、基本的には
大規模修繕にかけたコスト以上に売値が上昇するからです。

さらに言えば、実際の建物の経済的耐用年数を向上させる大規模修繕
である必要すらないのです。

例えば、エントランスをおしゃれなタイル張りにしたり、ポストを
今風なものにしたり、ダウンライトをつけてみたり、扉に木目調の
ダイノックシートを貼ったり、建物の名前をおしゃれなものに変えたり。

名前を変えるのはそもそも修繕ですらありませんが、「第四山田マンション」
よりも、「ヴィレッジ・ポン・デュ・ガール」のほうが高値が付きます。

このように、不動産そのもの質ではなく、「質が高そうに見せる」
だけでも不動産の値段というものは上がってしまうのです。

このため、特に業者の買取再販物件を購入する場合は要注意です。

実際の不動産の質、つまり耐久性や経済的耐用年数に関わる修繕が
あまり行われず、外観ばかりキレイにしてある可能性があります。

満室稼働中

空室のある物件よりも、満室の物件が高値で売買されることもまた、
周知の事実でしょう。

たしかに物件の立地などの理由により空室が長期化しているケースも
多いのですが、今の大家のやる気がない、管理会社の質が低い、現入居者
が劣悪で新規入居がつかないなどの理由で、本来のポテンシャルを発揮
できていない物件も多いです。

このあたりの要因を解決できれば、満室可動は可能です。

しかしながら、多くの人は「現時点で満室か否か」を重視します。

これが、入居付けの容易さのシグナルであるのでしょう。

この点を業者も理解していますので、物件を売却する際には何が何でも
満室にしようとします。
このために、首都圏のまずまずの立地でもAD3ヶ月のフリーレント2ヶ月
などの異常な条件で入居募集を行ったりします。
それだけのコストをかけても、それ以上に価格が上がるから良いのです。

また、業者は同時に家賃も高く決めようとします。
家賃が高いほうが、利回り換算での物件価格が上昇するからです。

そのような背景があるにもかかわらず、満室だから高値で売れるという
厳然とした事実があるのです。

駅近高立地

駅近好立地も不動産が高値で売れるシグナルです。

「駅徒歩5分」と「駅徒歩30分」だと、前者のほうが高値がつく
というのは多くの方にご理解頂けるでしょう。

その駅が、新宿まで特急乗車直通15分なら、確かに高値でも良いでしょう。

しかし、郊外のよくわからない、一日の乗降人数が1千人に届かない駅近
でも、その方が見栄えが良くなってしまう現象があります。

もしかしたら、駅徒歩30分の方が、周囲に工業地帯があり駐車場さえ確保
できれば需要は高いかもしれません。

でも、駅近は賃貸需要が高いことのシグナルになります。

銀座や六本木の不動産会社のオフィス

これは、不動産自体ともはや全く関係ありませんね。

不動産会社には、都心の一等地にあえてオフィスを構えている
ところがあります。

収益不動産専門などといっている、カタカナ社名の会社がほとんどです。

銀座や六本木、表参道など錚々たる立地にキレイなオフィスがあります。

その会社が販売している不動産の質とは本来何の関係もありませんが、
ここは生命保険会社が立派な本社を持っているのと同じです。

つまり、「こんな立派な会社が売っている不動産であれば信用できる」

といったふうに、不動産の質のシグナリングとしているわけです。

私などは、そのオフィスの莫大な賃料も物件価格に上乗せしているから
多分割高な物件なんだろうなとしか思いませんが、多くの人は、

「立派な事務所=良い不動産」という公式で眺めているように感じます。

シグナリングの大前提を理解しよう

このように、不動産にせよ保険にせよ、素人には質がわからないので、
販売会社側には質が高いように見せようとする動機が生じます。

ここで注意すべきなのは、このようなシグナリングを行うための
コストはかならず商品の販売価格に上乗せされているということです。

営業マンに高給を払っている、超高立地に立派な事務所を持っている、
販売する不動産を修繕し満室にする。

これらはそれ以上の売上が生じるからそうしているのであって、決して
自分の利益を犠牲にするボランティア精神からではありません。

このように考えてくると、むしろこのようなシグナリング効果を多用する
業者から商品やサービスを購入するのはむしろ割高の可能性が高いと
ご理解頂けるのではないでしょうか。

それはそのとおりだと私も思います。

しかし、シグナリングに頼らずに質の判断をするのは、確かな知識が不可欠
でしょう。

とすると、そのような知識を身につけることが、高値づかみを避ける最大の
防衛策といえるのではないでしょうか。

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