iDeCo(イデコ)が最近人気のようですね。
不動産投資を行っている個人でも加入でき、節税にもなるので、
多くの人が取り組んでいるようです。
実は私もイデコは個人的にも加入しています。あまりにメリットが大きいので、
加入していないことが考えられませんでした。
このイデコ、最も大きな効果が「掛け金を所得控除できる」ということでしょう。
所得控除できるとは、つまり経費にできると同義です。
ただ、個人で掛け金を所得控除にできたり、経費にできたりする制度はいろいろ
ありますので、この際まとめてみました。
iDeco(確定拠出年金)
特徴
個人で加入する確定拠出年金。
月5千円~6万8千円の範囲内で掛金を支払う。
掛金を自分で運用し、老後に備えるという趣旨の制度で、非常に手厚い税金の
優遇が得られるようになっている。
メリット
- 掛金を全額小規模企業共済等掛金控除により所得控除できる。
- 運用中の運用益が非課税
- 受け取り時は、一時金の場合は退職所得、年金の場合は年金所得となり、
税金が優遇される。 - 投資信託による低コスト運用が可能
メリットは、ほとんど税制優遇によるものです。
まず、イデコの掛け金は所得控除ができます。これにより、確定申告や年末調整により
所得税の還付を受けることができます。
所得の大きい人ほどメリットも大きくでることになります。
また、不動産で利益が大きく出ているような人も、所得控除により、経費を計上したのと
同じ効果を出せますので、経費に計上しつつ年金積立を行うことができます。
また、運営中の運用益も非課税なのです。
これも驚くべきことで、通常、証券投資の利益には20%の所得税が課されます。
それがかからないのです。
この状態が30年間続いたとすると、非課税であった事による効果は非常に大きな
ものになるでしょう。
さらに、受取時も税を優遇されます。
詳細は割愛しますが、一括して受け取った場合は、退職所得、分割して受け取った場合は
年金所得となります。
どちらの受け取り方も所得税が優遇されます。
以上のように、掛け金拠出時も、運用中も、受取時も、全てのタイミングで税金の優遇が
受けられる、ここまで優遇された金融商品はありません。
デメリット(というか注意点)
イデコには、これと言ったデメリットはありません。
ただ、以下のような要注意ポイントはあります。
- 掛金の控除の枠が、国民年金基金と共通のため、合計で月6万8千円とする必要がある。所得控除の対象になる掛け金が上限で6万8千円ですが、この枠は国民年金基金と共有
なので、国民年金基金に加入している人は注意が必要です。
ただ、次で記載する通り、国民年金基金は新規加入のメリットがほぼありませんので、
別にデメリットという程のものでもありません。 - 外国株式等の低コストインデックスファンドで運用することがベストだが、
短期的に元本割れするリスクがある。イデコは、運用期間を長く設定できる現役世代の場合、低コストの
株式インデックスファンドで運用することが王道です。
その場合、運用対象は株式になりますので、短期的には元本割れの
リスクがあります。これについては、債権ファンドや定期預金を一定割合組み込むことで
ボラティリティを管理する手があります。 - 自分で都度ポートフォリオにそって購入する投資信託のリバランス等の
運用指図をする必要がある。イデコは、自分で運用する年金ですので、何で年金を運用するか自分で
選択しなければなりません。
例えば、30代40代のうちはリスクを取って株式で運用していたとしても、
50代になってそのままでは、突発的な株価下落で年金資産を失うという
事になりかねません。これを避けるためには、自分の置かれた状況に合わせ、適度に年金の
投資対象を変更する必要があります。
普通の年金ではこれは年金側でやってくれるのですが、イデコはこれを
自分でやるのです。
- 元本確保型の商品を使用する場合、コスト割れする恐れが大きい。元本割れしない商品として、イデコは定期預金のような商品で年金資産を
運用することができます。しかし、イデコは口座の維持事態にも手数料が発生していたりもします。
通常このような定期預金的な商品では、手数料分も稼げないので、結果損を
することになります。現役世代が低コストな投資ファンドを超超期間運用するという部分がイデコの
旨味ですので、定期預金などにするのはどうかとも思います。 - 掛金は60歳以降しか受け取れない。途中で払込を辞めた場合も返金されず、
払込部分のみ運用していくことになる。途中でイデコの掛け金払込が中止になるケースがありますが、その場合も今まで
払い込んだ掛け金は返金されません。
基本的には、60歳以降しか受け取れないのです。よって、掛け金として支払った金額は、長期間拘束されることになります。
このため、今後10年程度で必要な資金は手元において置かなければなりません。
デメリットをいくつか記載しています。
加入方法
イデコのサービスを提供している証券会社に資料を請求し、
その証券会社経由で加入します。
総評
加入できる人は基本的に全員加入すべきだと思います。
それほどまでにメリットの大きい制度です。
注意点としては、本人しか所得控除を受けられないので、主婦など所得のない人は、
掛け金支払時の税金優遇がなくなってしまうという点でしょうか。
ただ、運用益や受取時の税制優遇は残りますので、加入してもメリットはあるでしょう。
国民年金基金
特徴
1号被保険者(つまり、厚生年金に加入していない人)が、国民年金に上乗せして
受け取ることができる年金です。
厚生年金非加入であれば、たまに勧誘の手紙が来ますよね。
メリット
国民年金基金のメリットは、以下のようなものが考えられます。
- 社会保険料等控除として、月68,000円まで所得控除することができる。
- 終身年金なので、長寿リスクに対応可能
- 社会保険料等控除なので、自分が家族の掛け金を支払った場合、
自分が所得控除を受けることができる
以上のようなところでしょうか。
特に目を引くのが、自分が家族の掛け金を支払った場合に、その掛け金を自分で所得控除
できるという点ですね。
例えば、自分が高額所得者であれば、子供が1号被保険者であれば、子供に国民年金基金に
加入させ、その控除を自分で受けるという手があります。
また、親が高額所得者の場合、自分の国民年金基金を親に払ってもらって、親でも所得控除
で節税するという手も考えられますね。
デメリット
- 加入はできるが、退会はできない。(掛金の減額は可能)
一度払い込んだ掛金は、60歳以降の年金としてのみ受取可能。 - 確定給付年金であり、インフレに弱い。
確定給付年金であって、インフレが発生しても支給額が一定である
という点は正直かなりのデメリットです。インフレが発生してしまえば、実質的に支給額が減額されるということです。
- 将来的な年金減額等の年金財政リスクを有する。
財政破綻のリスクがあります。昨今、多くの企業が年金を確定給付型から確定拠出型に切り替えています。
なぜかというと、確定給付型の年金は維持が極めて困難であるためですが、
例に漏れず国民年金基金も運営難に直面しています。 - 現況の予定利率1.5%は低すぎる。
予定利率1.5%というのも低すぎます。
予定利率は、今払った掛け金を、基金がどのような利回りで運用するかという
ことですが、1.5%は低すぎます。また、この予定利率は、加入時の利率が一生固定されます。
つまり、今後どれだけインフレが起ころうとも、生涯1.5%なのです。
ちょと、考えられないことです。 - 厚生年金の対象となると、国民年金基金は退会となる。
掛金は60歳以降に年金として支給される。
国民年金基金のデメリットは正直無視できないレベルです。
年金資産を築く現役世代にマッチしているとはとても言えません。
加入方法
地域別基金か職域基金に資料請求して加入します。
例えば、私であれば、港区の基金か税理士協同組合の基金のいづれかを経由して
加入することになります。
総評
デメリットが大きすぎて、正直加入する旨味があまりありません。
考えられるとすれば、親が超高額所得の大金持ちなどであれば、自分の国民年金基金の
掛け金を払ってもらえれば、節税効果が大きいというくらいでしょうか。
基本的に、使いどころがありません。
小規模企業共済
特徴
中小企業庁が運営する個人事業者や中小企業社長のための退職金積立制度。
特に個人事業主は、自分に退職金を支給することができないので、この制度を
利用するとメリットが大きい。
掛金は月1千円~7万円の範囲で設定する。
メリット
- 掛金は全額を小規模企業共済等掛金控除として所得控除できる。
- 契約者貸付制度があり、積み立てている共済金の範囲内で資金を借り入れる
ことができる。 - 共済金を退職金として受け取る場合、退職所得となり、税負担を大きく
軽減することができる。(ただし、退職所得の枠はiDecoと共有なので、注意が必要)
また、年金として受け取る場合も通常より優遇される。
メリットとしては、基本的にイデコと同時に加入できることでしょうか。
イデコを上限までかけていても、小規模企業共済に加入することができます。
所得控除ができるのは、イデコと同じですね。
デメリット
- 加入期間が20年未満で解約した場合、元本割れする。
- 通常20年以上は加入するため、手元資金の流動性は低下する。
- 保険ではないので、疾病入院などの際に保険金を貰えるわけではない。
- 掛金を減額した場合、減額部分は運用されない。安定的に掛金を支払える
範囲で設定するべき。
基本的には年金ですので、払い込んだ資金は長期間年金に固定される
ことになります。
ただ、これはどの制度でも同じですね。
加入方法
融資を受けている金融機関や、加入する商工会議所等を通じて加入します。
なお、税理士協同組合経由でも加入できますので、顧問税理士に依頼すれば
申し込み手続きが可能です。
総評
個人事業主は、法人と違って自分に退職金を支給できないというデメリット
を解消することができるのが大きな利点でしょう。
所得の大きい個人事業者や会社経営者は加入することで節税をしつつ
退職金の積立をすることができます。
経営セーフティ共済
特徴
中小企業庁の運用する共済。本来中小企業の連鎖倒産が発生することを避けるためのものだが、優れた節税効果を有する。
掛金は月5千円から20万円で、800万円を上限として払い込むことができる。
大きなデメリットが無い一方で、メリットは大きく、お勧め。
メリット
- 掛金を全額経費とすることができる。
経営セーフティ共済は掛け金が所得控除ではなく、事業の経費になります。
- 解約時には、原則として掛金は全額返金される。
年金ではありませんので、途中解約と回収が可能です。
- 解約返戻金の95%の範囲内で借入をすることができる。
- 年払いを選択することができ、大きな経費を計上することも可能。
基本的には生命保険と同じく、経費に計上しながら貯金していけるようなイメージです。
生命保険よりも返戻率が高い(100%)なので、生命保険よりも重宝します。
デメリット
- 解約返戻金を受け取った場合、その年の事業所得となり課税される。
このため、解約返戻金を打ち消す経費の計上を検討する必要。掛け金を経費にできるのですが、解約して返戻金を受け取ったときに
全額収益になります。
この点が受取時に税制優遇のある年金と異なります。 - 40ヶ月払い込まないと掛金が全額返金されない。基本的には返戻率が100%なのですが、40ヶ月間払い込まないと100%
戻ってきません - ゆうちょ銀行やネット銀行は使用できない。
- 個人の不動産賃貸業は加入しても経費にできない
これと言ったデメリットは無いのですが、最後が大問題ですね。
個人が不動産を持っているだけの場合、加入自体はできるのですが、
掛け金を経費にすることができません。
このため、サラリーマン大家さんなどはこの制度を使えないのです。
加入方法
融資を受けている金融機関や、商工会議所等を通じて加入します。
この点は、小規模企業共済と同じですね。
総評
法人を持っていたり、不動産以外の個人事業をされている方は、真っ先に
加入を検討すべきです。
本当にデメリットが無い優れた節税手段ですね。
ただ、あくまで課税の繰延でしかないので、解約時に課税されてしまいます。
これを避けるために、将来ぶつける経費を想定しておきましょう。