不動産を購入する場合、みなさんは利回りに着目していると思います。
もちろん、投資なのですから、毎年いくら儲かるかという利回りは
非常に重要な指標です。
しかし、売却時に「いくらで売れるのか?」という視点は、利回りと
負けず劣らず重要なのです。
不動産投資におけるもうけとは?
この、借入金の返済による儲けは、非常に見えにくく、あまり着目されません。
どういうことか見てみましょう
例えば、1億円の借入をして、この10年後にそれが8千万円であったとしましょう。
この物件を1億円で売却すればどうなるでしょうか?
この時、1億円-8千万円=2千万円残るわけです。
この2千万円の手残りはどこから出てきたのでしょうか?
家賃から毎月借入金を返済していましたよね?
この返済分を、物件売却時に回収しているのです。
これを、難しく言と、他人資本の自己資本への転換と言います。
つまり、家賃から借入金を返済している行為は、単に「支払って損している」
というのではなく、借入返済分を貯金できているのです。
(私は、物件の貯金と呼んでいます)
ただし、この貯金は、物件売却時にしか手元に出てきません。
このため、見過ごされがちなのです。
不動産が将来いくらで売れるかはなぜ重要?
- 前提
築25年のRC、物件価格1億円、表面利回り9%、金利2%のフルローンで購入し、
10年後に売却したと想定します。
- 買ったときと同じ価格で売れた場合
1億円の物件が1億円で売れた場合です。この場合、10年間の収支は次の様になります。
ご覧頂いたとおり、物件を売却した10年目にガツンと現金を回収できています。
これは何によって生じたのかというと、残債が6千7百万円まで減っているなか、
1億円で物件を売却したので、その差額が手元に大きく残ったのです。
毎年の税後キャッシュフローはそれほど大きくありませんが、
実は元金返済という形で貯金ができていたというわけですね。
- 買ったときから20%値下がりした場合
1億円で購入した物件を、8千万円で売却した場合です。
物件価格が8千万円に下がると、合計の投資成果がほとんど半分になってしまいました。
たしかに残債は6千7百万円まで減少し、1億円-6千7百万円=3千3百万円の貯金は
できたはずです。
しかし、物件価格が2千万円減少してしまいましたので、その分が実は
「貯金できていなかった」というわけなのです。
このため、3千3百万円-2千万円=1千3百万円しか、貯金できなかったのです。
このように、借入金返済による物件の貯金の回収は、物件価格が購入時からどのように
変動するかに大きく影響を受けるのです。
売却時の価格はどう考える?
以上の通り、物件売却時にどのように売れるかで投資の成果が
大きく変わることが分かりました。
ただ、購入時に売却価格を想定することはなかなか難しいことです。
今回はこれをざっくりイメージする方法を見てみましょう。
- 残存耐用年数の観点
通常、銀行は残存耐用年数に従って融資期間を決めます。
融資期間はながければ長いほどキャッシュフローが残りますので、
物件が多少高くても購入できる人がいます。
しかし、融資期間が短くなってしまうと、毎年のキャッシュフローが
小さいので、物件が高いと手が出なくなってしまうのです。
このように、売却時で残存耐用年数がどの程度になっているのかで、
銀行融資の期間をイメージすることができます。
この融資期間が短いほど、高い値段で売るのは難しいかもしれません。
- 融資できる銀行の観点
耐用年数とも関係するのですが、自分の次に買う人に融資してくれる
銀行がどこか考えるのです。
たとえば、売却時に築30年になっているRCは、通常の銀行は融資しにくいです。
このため、耐用年数を大きく超えて融資可能な、一部地銀や信用金庫、ノンバンク
が候補になるのですが、この場合金利が高いことが多いです。
このため、ある程度の高金利を想定すると、次買う人はあまり高値で変えなくなります。
なぜなら、金利が高い分キャッシュフローが出にくくなるので、その分安く
買わないと収支が回らないからです。
- 資産価値の観点
資産価値の観点も非常に重要です。言い換えると、土地値です。
例えば、1億円の築25年RCとして、その土地値が1億円あったとしたらどうでしょうか?
おそらく、売却時も1億円程度で売れる可能性は高いでしょう。
土地値が値下がりの防波堤となるのです。
この点で考えると、土地値の高い首都圏の物件は非常に強いです。
売値を推測する上では、資産価値が最も確実な要因と考えられますね。