不動産に限らず、節税に有用な手段として経営セーフティ共済(倒産防止共済)
の利用があります。
効用的には生命保険と同じものなのですが、生命保険よりもメリットは大きいです。
不動産でも上手く使えば本当に有用ですので、積極的に活用してゆきたいですね。
経営セーフティ共済とは? 概要とメリット
(1) 概要
経営セーフティ共済は、日本企業基盤整備機構が運用する共済で、本来の目的は
「取引先の倒産時に、連鎖倒産が起きないよう保険金が出る」というものです。
運用主体は独立行政法人で、中小企業倒産防止共済法に基づき設定されている
国営の共済です。
取引先が倒産して掛金の回収が出来ず、資金繰りが立ち行かなくなるような場合には、
最大8,000万円までの共済金を無利息、無担保、無保証で借りることができるのです。
中小企業にとっては加入が必須とも言えますが、一方で不動産賃貸業は取引先の倒産で
連鎖倒産するような業態ではありません。
つまり、この共済金を受け取ることが本来の目的ではないのです。
不動産投資でこの共済に加入するメリットは以下の3点でしょう。
(2) 解約時に支払い済み掛金の全額が返金される
通常の生命保険であれば、返戻率の高い商品であっても、返戻率が100%に
なることはありません。
一方、セーフティ共済は100%なので、掛金の全額が返ってくるのです。
ただし、いつでも100%返金というわけではありません。
返戻率は加入期間により変動し、以下のようになっています。
掛金納付月数 | 返戻率 |
1~11ヶ月 | 0% |
12~23ヶ月 | 80% |
24~29ヶ月 | 85% |
30~35ヶ月 | 90% |
36~39ヶ月 | 95% |
40ヶ月以上 | 100% |
要注意なのが、加入12ヶ月未満なら返戻無しということです。
100%の返戻は40ヶ月加入後となります。
ただ、40ヶ月経過した後に返戻率が下落することはありません。
いつ解約しても問題ない状態になるわけです。
一種、定期預金を節税をしつつ取得できるようなものです。
このため、ある程度長期的な資金需要を見越して加入してゆくことが必要に
なってくるでしょう。
ただ、積立の上限は800万円です。
800万円貯まると自動的に積立が止まってしまいます。
(3) 掛金の全額を経費とすることができる
セーフティ共済の大きなメリットは、掛金の全額を経費とすることができる点です。
通常の生命保険であれば、返戻率の高い商品は「半額損金」であることが普通です。
また、全額損金になる商品であっても、返戻率が100%になることはありませんん。
このため、あらゆる面で生命保険を上回っており、非常に役立つツールといえます。
掛金は月額5千円~20万円の範囲で選択可能です。
一度設定した掛金を増額するのは簡単ですが、減額するのは事業規模の縮小など
一定の要件があります。下手に大きな掛金を設定しないように注意しましょう。
将来的な資金繰りも見据えて、掛金を決定する必要があります。
(4) 意外なメリット 借入ができる
セーフティ共済には、一時貸付金という制度があります。
払込済み掛金の限度内で、貸付を受けられるのです。
掛金納付月数 | 貸付限度額 |
1~11ヶ月 | 0円 |
12~23ヶ月 | 掛金総額×75%×95% |
24~29ヶ月 | 掛金総額×80%×95% |
30~35ヶ月 | 掛金総額×85%×95% |
36~39ヶ月 | 掛金総額×90%×95% |
40ヶ月以上 | 掛金総額×95%×95% |
掛金総額が800万円 | 760万円 |
借入条件は、期間1年の金利0.9%(平成29年4月時点)、金利は貸付時に一括前払いで、
期限一括償還です。
担保・保証人不要なので、急な資金需要にすぐに対応することができます。
期間は1年しかありませんが、物件の購入諸経費に一時的に資金を当てたい場合など、
使用できるタイミングはありそうですね。
もちろん、期間が1年ですので、綿密な資金繰り計画が必須です。
残念な点はたったひとつ 個人では使えない
万能戦士のセーフティ共済にも死角はないのでしょうか。
残念なことに、たった一つだけあります。
それは、法人でのみ可能だということ言うことです。
個人は、不動産所得のみある個人が入っても、掛金を経費にすることができません。
このため、払い損とは言いませんが、ほとんど意味がありません。
個人でも事業所得が生じている人は加入可能です。
たとえば、個人で不動産以外の事業をしている人は加入し、掛け金を事業経費
とすることができます。
だだ、個人の不動産オーナーは加入しても旨味がありません。
この経営セーフティ共済が活用できないことも、個人で投資するデメリットと
いえるでしょう。
どう使う? 課税の繰り延べに注意
では経営セーフティ共済をどのように活用すべきでしょうか?
注意が必要なのが、あくまで課税の繰り延べであるという点です。
解約時に掛金の全額が返ってくるのは良いのですが、その全額に税金がかかります。
このため、通常の生命保険と同じく、解約する際には大規模修繕や退職金などの
何らかの経費を発生させ、返戻金を相殺してゆく必要があります。
タックスコントロールが必要になるのは生命保険と全く同じですね。