不動産賃貸経営を行っていく上で、居室の原状回復費は見えづらいですが、
かなり大きな支出になるものです。
その適切な理解無くして、賃貸経営はできません。
原状回復費を無視したシュミレーションは多い
最近は、不動産業者や税理士がシュミレーションを作ってくれることも多いです。
このため、そのシュミレーションが適切かの相談を受けることもあります。
このとき、最も目につく不備は、原状回復費が織り込まれていないことです。
そもそも、原状回復費は不動産業者などは認識していないこともあります。
彼らはあくまで売買の専門家であって、賃貸経営の専門家ではないので、
文句を言うのも若干筋違いではあります。
ただ、この費用の折込無くして物件の収支を予想することはできないので、
投資家自身がしっかりと把握しておく必要があります。
しかし、更に大きな問題は、長期入居があった部屋の原状回復費の
考え方です。
居住期間が長くなれば大きくなる
原状回復費は、通常は1Rであれば10万円程度、広い2LDKなどであれば
30~40万円程度でしょうか。
しかし、入居期間が長くなれば、その分部屋が痛む事になりますので、
費用は大きくなっていきます。
また、長期間入居していた部屋は、部屋が傷んでいるだけでなく、
設備が旧式化して、現状の賃貸市場で競争に耐えられません。
エアコン、インターホン、照明、浴室、化粧台、
下手するとバランス釜だったりしますが、これらの総取替え
が必要になる恐れもあります。
また、間取りの競争力も問われる可能性もあります。
昔よくありがちな3DKの部屋や、和室も今は好かれません。
こうなると、原状回復費は相場では収まりません。
小さい部屋でも40万円、ユニットバスの交換や、広めの部屋で間取り変更を伴うと、
100万円くらい平気でかかってきます。
そうなるとどうでしょうか。
家賃が5万円の部屋であれば、回収に2年かかることになります。
これは、賃貸経営としては非常に大きなリスクです。
長い入居期間を保有し、その分の賃料を受け取っていたのなら良いでしょうが、
中古物件であれば対応する賃料を受け取っていないにも関わらず、修繕コスト
のみ負担しなければならないのです。
その虚無感たるやうまく表現ができません。
居住期間の長い部屋が多い場合、物件価格で帳尻合わせをしましょう
ということは、つまり、長期入居の原状回復費は、ランニングコストというよりも、
投資のイニシャルコストとして計算しておくべきなのです。
物件を購入する際に、入居期間を確認するのは、様々な理由がありますが、
この現状回復リスクの織り込みも大きな理由の一つです。
10年入居している部屋が4部屋あるなら、400万円を原状回復費として織り込み、
その分物件価格を交渉する必要があるということです。
そうしなければ、その部屋の原状回復費は全てあなたの持ち出しになります。
それは、入居期間の家賃を受け取った今のオーナーに持ってもらうべきでしょう。
もちろん、交渉事なので断られる可能性はありますが、その場合はその可能性
を考慮してなお収支の計算が成立するのか把握しておく必要があります。
購入したあとになって、「そんなこと聞いてないよ~」とならないように注意しましょう。