個人の不動産収支を計算をする際に、土地の利息が経費にならない部分があるという点が
非常に見過ごされがちです。
このため、今年は赤字だったので所得税が還付だと期待していても、
蓋を開けてみると還付がなかったということや、還付額が大きく減ってしまった
ということはよく発生します。
なぜこのようなことになるのでしょうか?
土地等の負債利子の損益通算の特例
通常と借入の利子は、全額経費になります。
しかし、その年の不動産所得(利益)が赤字の場合にのみ、例外が発生するのです。
この場合、借入のうち、土地の取得に対応する部分の利子は、経費にならないのです。
(正確には経費になった上で、他の所得と相殺できないということですが、ここでは
経費にならないと表現しています)
例えば、今年の不動産所得が▲200万円、利子が▲300万円、融資が10,000万円で
土地が6,000万円、建物が4,000万円だったとします。
不動産所得の▲200を給与と相殺して還付だ楽しみだといっていても、実際は少し違います。
この時、▲300×(10,000-4,000)÷10,000=▲180
は、経費にならないのです。
結果、実際に給与と相殺できる金額は▲20万円でしかありません。
この時、取得価格に占める土地の割合は、土地建物の取得価格総額から、
建物の取得価格を差し引いて算出することができます。
そのため、(10,000-4,000)で土地を計算しています。
特に土地値物件で注意
この規定は、結局のところ土地に対応する利息が損金に入れらないのですが、
これで最も大きな影響を受けるのは、高額所得者が減価償却狙いで築古の土地値物件
を購入したような場合です。
減価償却を目的に物件を購入する場合、保有5年程度で売却しなけば急激な
デットクロスになりますので、物件の流動性の確保は大きな課題です。
これを克服するために、資産価値、つまり土地値の出ている物件を購入することに
なりがちなのですが、注意が必要です。
つまり、購入額のうち土地部分が経費から除外されますので、土地の割合の高い物件は
その分利息を経費に入れづらくなります。
都内で築古アパートを購入すると、土地の割合が90%を超えることもざらにあります。
このため、利息の90%を経費にできないということになりかねないのです。
特に、築古のアパートに長期融資をつけてくれる銀行は概ね金利が高い傾向にありますので、その大半が経費にならないという事態は非常に大きな損失です。
購入前に、建物割合を高めて売買契約書に記載するなど、十分な注意が必要です。
もともとはバブル期の遺産
さて、この制度は実際意味不明です。
土地に対応する利子を経費に入れないことが、一体どのような政策意図を
実現するためのものなのでしょうか?
この制度は、もともとバブルの土地高騰期にできた規定です。
当時は土地を買いさえすれば転売できたような状況でしたが、
それに加えて高金利でもありました。
このため、借入をして土地を購入すれば、その借入の利子だけで所得を大赤字に
できたのです。
そして、おりを見て土地を売却する。
非常にお手軽な?節税スキームがあったのです。
これが土地の節税目的での需要を押し上げ、当時の土地の高騰の一因となっている
との批判があったので、土地に対応する借入の利子を経費から除外し、
土地を買っただけで大赤字にならないようにしたというわけですね。
当時としては実にまっとうな政策意図があったわけですが、既に土地の高騰が過去の伝説
となった現代でもこの税制だけが生き残っているのです。
税金を多く徴収する制度は国としては維持したいですし、損害を受けるのは一部の
大家だけなので、税制改正への要望も殆ど無いため、放ったらかしなのです。
なんともはや、税制でも保護されない大家は辛いということですね。