不動産オーナー専門で税理士をしていると、税金以外の質問もとても多いです。
どんな物件をどのように選んだのか、このエリアはどうだろうか、などなど
(もちろん、分からない場合は分からないとお答えしていますが)
その中で、結構聞かれる内容に、「良い不動産会社や営業パーソンをどう見分けるか」
とうことがあります。
この質問について今回は考えてみます。
ちなみに、本来は営業パーソンと記載すべきところですが、どうも読む語感が悪い気がするので、以降は営業マンと記載します。
失敗したくない=良い物件が買いたい
「良い不動産会社・営業マン」を見分けたい。
という質問は、特に物件を初めて購入するような方からよく受ける質問だと感じています。
これはなぜかと考えると、やはり皆さん「失敗したくない」という意識に行き着くのではないでしょうか。
つまり、物件を購入する際に失敗してしまうと、恐ろしい事になってしまうという漠然とした恐怖感があるのだと思います。
物件を購入に失敗したくないという意識は、反対に言えば良い物件を買いたいということだと思います。
良い物件を買いたいのは当然ですよね。不動産を買う人は皆そう願っています。
では、なぜそれが良い不動産会社・営業マンを見分けたいという願いにつながるのでしょうか?
良い物件を探せばよいのであって、別に営業マンを見分ける必要はないはずです。
良い不動産会社・営業マンとは?
良い物件が買いたい=良い不動産会社・営業マン
という考えの方によくよく話を聞いてみると、良い営業マンは良い不動産を紹介してくれるという考えが根底にあるようです。
良い不動産を紹介してくれる営業マンが良い営業である。
では、良い不動産とは何かと考えると、それは結局儲かる物件ということでしょう。
もちろん、不動産投資をする方は、収益を目的に不動産を購入するわけですから、儲からない物件は買いたくないでしょう。
ということはつまり、儲かる物件を紹介してくれる営業マンが良い営業マンということなのでしょう。
儲かる不動産とは?
では、さらに進めて、儲かる不動産とは何かと考えてみましょう。
実は、この「儲かる不動産」は、人によって全く定義が異なってくるのです。
ある人は利回り至上主義です。高利回りで潤沢なキャッシュフローがでる物件でなければ良い物件とは見ません。
ある人は積算至上主義です。いくら利回りが高くても、積算価格が出ていない物件は純資産を既存するゴミのようなものです。
ある人は節税至上主義です。いくら積算やキャッシュフローが出ていても、自身の納税額を圧縮できない物件には見向きもしません。
ある人は規模拡大至上主義です。積算が出ていて、耐用年数の残っているRC以外は見向きもしません。
つまり結論としては、「儲かる物件は買い手によって定義される」のです。
その物件を購入してもうかるか否かは、あくまで買い手側の判断に依存するのだということがご理解いただけるでしょう。
もちろん、これはその物件を購入して本当に儲かるかどうかではなく、儲かるという期待を持つことができるということです。
儲かる物件を紹介してくれるのが良い営業マンという矛盾
ここまで考えると、「儲かる良い物件を紹介してくれる人が良い営業マンである」という話に矛盾があることがわかるのではないでしょうか?
つまり、その物件を購入して儲かるかどうかは、買い手しか判断できないはずなのです。
営業マンの持ってくる物件が儲かるか否かは、買い手が判断するのです。
そもそも物件の紹介をする営業マンが、その物件が儲かるかどうかは、根本的に判断することはできないでしょう。
「儲かる物件」を紹介できる営業マンはこの世に存在しないのです。
なぜなら、儲かるかどうかは買い手が判断することであって、営業マンが判断することではないからです。
というよりも、「儲かる物件」の定義が買い手によって多様である以上、営業マンが儲かるかどうかなんて判断しようがないのです。
不動産仲介業は仲介が仕事
営業マン、つまり不動産仲介業者とは、そもそも不動産を仲介することが仕事です。
仲介とは、そもそもなんのことか調べてみましょう。
仲介(ちゅうかい)は間に入ること。商学用語では取引が行われる際に、売り手と買い手の間に入って話をまとめて契約を成立できるようにすることである。(https://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%BB%B2%E4%BB%8B)
仲介とは売り主と買い主の間に入って、話を取りまとめることなのです。
つまり、仲介とはあくまで売り主と買い主の間のパイプ役なのです。
そう考えると、別にパイプに良いも悪いも無いというのはご理解いただけるでしょう。
上水道は飲める水が流れていますが、下水道には汚水が流れています。
しかし、浄水も汚水も同じパイプが運んでいるのです。
パイプ自体に良いも悪いもありません。
仲介業者はあくまで仲介が仕事ですから、不動産の売買を取りまとめるという仕事をするだけです。
もちろん、この取りまとめ自体が一つのアートであって、素晴らしい仕事をする仲介業者も多いですが、ではその取りまとめられた物件を購入して「儲かる」を考えているわけではありません。
自分で儲かるか否か判断ができるようになれば良い
つまり、「良い営業マンを見分けたい」という話をされる方は、裏を返すと、「どのような不動産を買えば儲かるか判断できない」ということなのです。
本来儲かる不動産の判断は買い手しかできないのですが、それを自分ではできないので、その儲かるかどうかの判断を他の人にやってほしいというところが本音であろうと推測します。
ただ、上で書いたとおり、その物件を買えば儲かるかどうかは、本来自分でしか判断できないのです。
その判断を代行できる不動産営業マンは、定義上存在しえないのです。
「儲かる」の定義が人によって異なる以上、その判断を他の人が代行できるはずがありません。
ですので、本来は、自分が儲かると思う物件の条件を営業マンに伝え、その条件に合致する物件を探してもらうというのが本来の流れです。
そういう意味で、「良い営業マン」を探す努力は、率直にいうと時間の無駄のように個人的には思います。
どのような物件を買えば儲かるのか、それを判断できるようになれば良いのです。
どのような物件を買えば儲かるのか、その判断ができるようになれば、極論すれば、間にはいる営業マンは誰でも良いのです。
仲介には仲介の技能の良し悪しがある
一方、本当に仲介業者は何でも良いかというと、そういうわけではありません。
仲介は売り主と買い主の間の取りまとめですが、これが一筋縄では行きません。
売り主は売り主で、売却による経済メリットを最大化したいわけですが、そうなると買い主の経済的メリットを削ることになります。
このような根本的にはゼロサムゲームとなってしまう中で、取引を取りまとめるというのは並大抵のことではありません。
また、契約上の瑕疵や重要事項等説明書の記載漏れ、過度に買い主に不利になっている条項の有無、前売り主から名義が変わっていない太陽光発電設備への対応、レントロール誤りがあった場合の対応など、見逃しても誰も文句を言わないけど、買い主のために諸条件を整えるのはかなり経験とスキルが要求されます。
私自身、多くの仲介業者と取引をしてきましたが、本当に適当な業者は適当です。重要事項等説明書を毎回コピペで使いまわしていたり。
あきらかに建ぺい率超過の物件を、その旨記載しない重説で契約されそうになったときは、こんな適当な業者も世の中にはあるのだという衝撃を受けた記憶もあります。(指摘したら謝罪はされましたが。。。)
このあたり、実は仲介業者の良し悪しというのは確実に存在します。
しかし、それはあくまで仲介という職責の範囲の良し悪しであって、買い主が儲かるかどうかで判断すべきポイントではありません。