不動産投資で組織再編を活用する 合併という選択

不動産投資をしている中で、いくつかの法人を設立することも
あると思います。

1法人1物件スキームと呼ばれる方法なら、銀行ごとに法人を作った
人もいるでしょう。かなりグレーな手法ですが。

そうでなくとも、税率を抑えたり、株主構成が違ったりという理由で
いくつか法人を作ることも考えられます。

法人をまとめたいというニーズが増えている

最近は、このようにいくつか設立した法人をまとめることができないか
というニーズが増えてきているようです。

これはおそらく、融資の拡大フェーズが終わり、法人を育てることの
重要性に多くの人が気付き始めたことが遠因としてありそうです。

また、属性偏重の融資が終わり、不動産の賃貸経営能力の重要性が増している
中で、物件がいくつかの法人に分かれていることに弊害を感じる方も
いるようですね。

また、各法人に分散している利益を一つの法人にまとめることができれば、
法人をより優良なものにできるという点もメリットです。

このため、多くの法人に物件が分散を解消したいと考える方が増えています。

このような時には、まずは会社の清算と資金の回収が考えられます。

ただ、会社を清算して資金を回収した場合、出資金を超える回収額は基本的に
配当収入になりますので、オーナーで所得税・住民税が生じるという問題があります。

このようなオーナー再度での課税を避けるために、組織再編、つまり
合併が検討される機会が増えているようです。

合併の考え方

合併には、課税される合併と、課税されない合併があります。

この課税されない合併のことを、適格合併といいます。

税法上の課税しない要件に適格する合併ということですね。

この場合、課税されない合併をしないと、ほとんどメリットがありません
ので、課税されないための条件を考えてみましょう。

同一の者によって100%支配されている法人同士の合併

対価として合併法人株式以外(例えば現金)を交付しなければ、適格合併になります。

基本的に、このような法人を合併させる際に、対価を現金で支払わないといけない
理由は皆無ですので、普通は適格合併に該当します。

また、不動産投資のために設立された法人は、基本的に株主や出資者が同一と考えられる
ので、基本的にはほとんど適格合併に該当すると考えられます。

この「同一の者」については、家族親族を含めて考えます。

たとえば、A社が自分の100%出資で、B社が妻の100%出資としましょう。

この場合、株主が別人とは見ません。あくまで同一の意思決定グループによって
支配されていると見ます。

このため、A社もB社も同一の者によって100%支配されていると見るのです。

この場合、普通合併の対価を現金などにする理由も無いので、普通は適格合併と
なり、課税されることはありません。

それ以外の合併

1人の個人や、同一の親族グループによって100%支配されていない不動産投資
の法人というものは、基本的に想定できません。

それは、外部の株主がいるということですからね。

あるとすれば、歴史のある地主系大家さんの資産管理法人で、過去に相続税対策などで
株式を全くの赤の他人に譲っていたなどの極めてレアなケースでしょう。

このような場合にも、適格合併となる条件は税法上定められているのですが、基本的に
発生することは無いので、ここでは割愛します。

不動産管理会社や保有会社の場合、基本的には課税されない

以上のようになっているので、同族内で設立した法人であれば、あえて
意図して狙わない限り、合併によって課税されることはありません。

このため、法人をまとめるにあたって、合併は非常に有用で使い勝手の良い
手段であると考えられます。

単純に、2つの法人を足し算して1つの法人をつくるというイメージ通りの
手続きで済みます。

合併を検討する際の注意点

債権者保護手続き

合併には、債権者保護手続という手続きが必須です。

これは、合併により、合併される会社と、合併を受け入れる会社で、
いままでと状況が変わるため、両者の債権者に対し、合併に意義を
申し立てる権利を与えているのです。

不動産の法人の場合、債権者は基本的には物件の融資をしている
銀行ということになるでしょう。

この債権者保護手続が適切になされなかった場合、合併を完了させる
ことができません。
仮に強引に勧めても、銀行には異議申し立てをできる権利があるので、
あとで合併をひっくり返すことができます。

このため、融資を受けている状態で合併を行うには、事前に銀行に
説明し、了承を受けておく必要があるでしょう。

この債権者保護手続は、合併される側と合併する側のどちらの会社の
債権者にも認められているので、注意が必要です。

つまり、合併される会社の物件を売却し、借り入れを返済していれば
誰にも文句を言われず合併できるかというとそうではありません。
合併をする、つまり受け入れる方の会社で融資を受けていれば、
受け入れる側の会社の銀行にも承諾を取る必要があるのです。

銀行が合併を認めるかどうかは、相談次第とはなりますが、基本的には
問題ないのではないかと考えています。

というのも、不動産投資で使われるような法人は、基本的に個人法人を全体として
評価しますので、法人がいくつあろうとも、事前に銀行としてはその全てを審査
し、収支が回っていることを確認しているはずです。

このため、法人が合併するといっても、全体の中の内訳が変わるという程度の
話となりますので、銀行の認識する債務変換能力に大きく影響するとは
考えにくい部分です。

1法人1物件(銀行)スキームはどうなるか

ここで、1法人1物件(銀行)スキームにより法人を大量設立した場合
はどうするか考えてみましょう。

1法人1物件(銀行)スキームとは、一般に、銀行毎に法人を設立し、
銀行には他の法人で融資を受けていることを申告しません。

この場合、上記の債権者保護手続が大きな障害になると考えられます。

つまり、1法人1物件(銀行)スキームの場合、ある法人に融資している
銀行は、別の法人が融資を受けて不動産を持っているかどうかを知りません。

結果、合併の前段階として、合併の打診を銀行に行った際に初めて、銀行は
そのような法人と債務の存在を認識することになります。

これは、銀行にとっては寝耳に水どころの話ではありません。
他の融資が無いことを前提に融資しているのに、いきなり出てくるのですから。

この場合、合併が銀行によって承認されることは期待できません。

というか、その時点で取引停止になるか、下手をすると期限の利益を喪失する
可能性すらあります。

このため、このスキームで法人を設立していたような場合は、その出口として
法人の合併を用いることは大変困難です。

あるとしても、合併を行う法人の両方で、物件を売却し債務を完済した後で
ということになるでしょう。

その後、まっとうな法人として事業を行っていくことは可能です。

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