ふるさと納税を毎年している方も多いでしょう。
私も毎年限度額までしています。
ふるさと納税には限度額があり、限度額は基本的に所得金額に連動します。
では、個人で保有していた不動産を売却し、譲渡所得が生じた場合には、ふるさと納税の限度額はどのようになるのでしょうか。
結論を最初に言ってしまうと、限度額は増えるが、思ったほど増えるわけではない、ということになります。
譲渡所得の計算方法
まずは、譲渡所得と譲渡所得税・住民税の計算方法を確認しておきましょう。
個人の不動産売却益に対する課税は、「申告分離課税」と呼ばれます。
つまり、他にどのような収入が個人としてあろうと、不動産売却益の税金はそれらとは分離して独自に計算するということですね。
まず、不動産売却益である譲渡所得を計算します。
譲渡所得=不動売却収入-(取得費+譲渡経費)
ですね。
この譲渡所得に対して、長期譲渡に該当する場合は所得税15.315%、住民税5%の合計20.315%が課税されます。
短期譲渡の場合は、所得税30.63%住民税5%の合計39.63%ですね。
通常、ふるさと納税は所得が増加すると、その限度額が増え、ふるさと納税できる金額が増えますね。
不動産の譲渡所得が発生した場合は、ふるさと納税限度額は増加するのでしょうか?
ふるさと納税の限度額
ふるさと納税の限度額の計算方法を見てみましょう。
ふるさと納税の限度額は、以下の①~③の3つの合計額によって計算されます。
①所得税の所得控除
(寄附金額-2千円)×所得税の税率×1.021
寄附金額が総所得金額等の40%が上限
②住民税控除(原則)
(寄附金額-2千円)×10%
寄附金額が総所得金額等の30%が上限
③住民税控除(特例)
(寄附金額-2千円)×(90%-所得税の税率×1.021)
控除額が住民税所得割額の20%が上限
3つの計算式の合計で、かつそれぞれに上限が設定されているため、上限額の計算は大変複雑に見えますが、実際はそうでもありません。
通常、③の住民税所得割額の20%が一番低い上限金額になりますし、この③がふるさと納税の効果で最も大きな威力を発揮する部分です。
いくら①と②の上限に達していなくても、③の上限に達してしまえば、ふるさと納税の節税という観点での効果は大きく減退します。
結果として、③の住民税特例控除部分をマックスまで使えるふるさと納税の金額のことを、ふるさと納税の上限額と通常は認識するわけですね。
譲渡所得が生じた場合のふるさと納税限度への影響
つまり、ふるさと納税の限度額が住民税所得割額に応じて増減するため、譲渡所得の発生により住民税所得割額が増加すれば、ふるさと納税の限度額も増えるということになります。
では譲渡所得が出れば、住民税所得割が増えるのかというと、増えますね。
上述の通り、不動産譲渡所得には、長期譲渡の場合で5%、短期譲渡の場合で9%の住民税が課されます。
要するにこれが住民税所得割ですから、ふるさと納税の上限額も増加するというわけです。
一方で、例えば給与所得が1千万円増えた場合と、不動産譲渡所得が1千万円発生した場合を比べると、不動産譲渡所得の場合のほうがふるさと納税の限度額は小さくなります。
この点理由は非常に簡単で、不動産譲渡所得の方が税金が安いからですね。
不動産譲渡所得によって発生する住民税所得割の税率は、長期譲渡の場合で5%、短期譲渡の場合で9%です。
一方、給与所得や事業所得など、他の総合課税所得に対する住民税所得割の税率は10%なのですね。
つまり、不動産譲渡所得は、他の所得に比べ税金が安いのです。
住民税所得割額の発生も少なくなるわけですから、他の所得に比べ上限が小さくなるのも当然ですね。
譲渡所得発生により増加するふるさと納税上限額の計算方法
譲渡所得発生により増加するふるさと納税限度額の計算は大変簡単です。
不動産譲渡所得は売却金額から取得費(簿価)や仲介手数料などの一部経費をマイナスすると簡単に算出できるので、どのくらい譲渡所得が発生するのか容易に計算することができます。
不動産譲渡所得を計算し、不動産譲渡に係る住民税所得割額を計算できれば、それを以下の計算式にあてはめて、ふるさと納税の限度額を計算することができます。
この計算式は、上述の①~③の計算式を、③が住民税所得割額の20%になるように再構成したものですね。
ただ、ちょっとやっかいなのが、「所得税の限界税率」ですね。
この所得税限界税率とは、今年の所得税の申告の際に適用される税率です。
通常、ふるさと納税を行うタイミングでは、今年の所得がまだわかりませんから、そもそも所得税率がいくらなのかは不明です。
給与所得であれば去年の実績値でも出来るでしょうが、不動産所得や事業所得があると、今年の収入と経費を概算して所得を計算する必要があり、なかなか大変ではあります。
不動産の譲渡をした方は、このようにふるさと納税の上限への影響を計算してもらえればと思います。
3,000万円控除の適用を受けるときはどうなる?
居住用不動産を譲渡した場合には、一定の条件を満たせば、譲渡所得の3,000万円特別控除を受けることができます。
これは、自宅を売却して譲渡所得が出た場合に、3,000万円までは税金がかからないようにする仕組みですね。
例えば、自宅を売却して2,000万円の売却益が出た場合、3,000万円特別控除を受けると、不動産譲渡所得はゼロ円となります。
所得がゼロなわけですから、当然税金もゼロです。
こうなると、住民税所得割もゼロなわけですから、ふるさと納税の限度額は基本的に増えないということですね。
ふるさと納税は、税金の軽減なわけですから、そもそも税金を払っていない状況では使えません。
ですから、自宅の売却を行った場合は、売却益が3,000万円を超えて、不動産譲渡所得が発生すればふるさと納税の限度に影響が出てくるということになります。
(自宅の売却で3,000万円を超える売却益がでることはなかなか無いでしょうが)
それ以外の、たとえば賃貸用不動産や別荘、更地など、居住用不動産の特例を受けられない不動産を売却した場合は、売却益がダイレクトに不動産譲渡所得となり、住民税所得割も発生しますから、ふるさと納税の限度額はそれだけ増加することになります。