普段物件を探す際には、基本的には利回りに着目して物件を探していると思います。
しかし、利回りが高いからといって飛びつくことは危険です。
物件の評価方法、つまり金額の付け方は幾つか方法があります。
それぞれの評価方法を理解し、誰がどのように見ているのか理解しておきましょう。
そうでなければ、自分は価値はあると思ったのに、実は評価の低い物件を買ってしまう
ということも起こりえます。
特に、銀行の評価方法と大きなズレが生じてしまうと、そのズレは取り返しのつかない
自体になりかねませんので、一層の注意が必要です。
取引事例比較法
取引事例比例法は、近隣の実際の取引事例をもとに、物件の価格を「類推する」方法です。
実際にできれば文句ない方法ですが、実務的には少し難しいと思います。
正直、不動産の価格には個別性も大きく、また個人が取引事例を網羅的に参照することも
あまり現実的ではないので、物件の検討段階では使いにくいです。
収益還元価格
収益物件の値段の付け方の一つが、収益還元価格です。
収益還元価格にもいくつか方法があるのですが、このなかで特に一般的なのが、
直近の家賃収入を利回りで割り戻して計算する方法です。
例えば、月収100万円の物件で、周囲の平均表面利回りが8%とすると、
100万円✖12ヶ月÷8%=15,000万円
となります。
つまり、この物件の値段は15,000万円ということです。
これは、物件からの家賃収入のみに着目した計算方法です。
収益物件の値段の付け方としては、この収益還元価格が一般的です。
みなさんも、普段は物件の表面利回りがいくらかということに着目して
物件を探していると思います。
それはつまり、収益還元価格で物件を見ているということなのですね。
この他にも、ディスカウントキャッシュフロー(DCF)法もありますが、
素人が計算には複雑な割に信頼性に乏しく、通常使うものではありません。
不動産鑑定士が鑑定評価を作る際には、DCF法も使われます。
積算価格
積算価格は、一般的に銀行が評価する際に用いる方法です。
土地:路線価から計算する土地の実勢価格相当額
建物:RCなら25万円/㎡などの再調達価格から、経年減価をマイナスして計算
例で考えてみましょう。
物件概要
土地 :200㎡
建物 :400㎡
構造 :RC造
築年 :25年
路線価 :15万円/㎡
建物 :25万円/㎡
年間家賃:1,200万円
この場合どうなるでしょうか?
土地:15万円✖200㎡÷0.8=3,750万円
0.8で割り戻しているのは、路線価が公示価格の8割と想定されるためです。
建物:25万円✖400㎡✖25年÷47年=5,319万円
合計:3,750万円+5,319万円=9,069万円
というわけで、この物件は9,069万円ということになります。
では、この物件の利回りはどうなのでしょうか?
1,200万円÷9,069万円=13%
となります。
再調達価格
再調達価格と何でしょうか?
一般的には、積算価格と再調達価格は同一視されることが多いです。
しかし、実際は区別すべきです。
再調達価格は、あくまで「その時点で同じ物件を作るとすると、いくらかかるのか」です。
本来の資産価値は、積算価格ではなく、再調達価格で判断すべきです。
再調達価格と積算価格の計算との違いは、「単価の設定」です。
土地については、積算価格は相続税路線価の㎡単価をもとに計算します。
ここで問題となるのが、相続税路線価と実勢価格は一致しない場合が多いということです。
首都圏では相続税路線価は実勢価格より低いことが多いです。このため、首都圏では
資産価値はあっても積算価格の小さい物件が少なくありません。
また、地方では逆に、相続税路線価が実勢価格を上回るケースが多々あります。
このような場合には、積算価格は大きく銀行評価は高いが、実際の資産価値は小さい
ということも十分ありえます。
また、駅前の商業地や、容積率が400%以上ある土地、ネームバリューのある立地などは、
相続税路線価と実勢価格の乖離が大きくなる傾向にあります。
土地に再調達単価は、以下の方法で調べましょう。
正確に知ることは難しいですが、参考としては十分機能します。
- 国土交通省の土地総合情報システム
- homesやathomeで調べることのできる土地の売り出し価格
- 新築戸建ての販売価格から逆算する
建物については、積算価格の計算上は、RCなら20~25万円/㎡が多いように思います。
しかし、こちらも実際の建設時単価は時代によって変動します。
特に最近は人件費や資材の高騰で新築の建設単価は上昇していました。
このような上昇は積算価格の計算に反映されません。
ここ最近は沈静化していますが、実際の建設単価は35万円/㎡以上になっているのでは
ないでしょうか?
そう考えると、積算価格と再調達価格の差異は実に大きいものになります。
銀行によって異なる評価方法
物件の評価方法は、銀行により実にまちまちです。
多くの銀行は積算価格で評価しますが、収益還元価格で評価する銀行もあります。
普段は積算で評価する銀行も、容積率や用途区分によって、積算価格20%+収益還元価格80%というように収益還元価格重視で評価する場合もあります。
また、銀行自身も積算価格と実勢価格の乖離は認識していますので、
不動産鑑定評価書の差し入れによって評価を見直してもらえるケースもあります。
銀行自身が不動産評価部隊を持ち、その評価に従う場合もあります。
(その評価はかなり保守的なことも多いのですが)
さらに、同じ積算価格でも、相続税路線価をそのまま採用する場合や、1.2倍する場合
もあり、また建物の単価も銀行によってまちまちです。
このため、銀行の評価方法の違いを把握し、この物件はあの銀行なら評価出るかな?
というように、銀行の評価基準を確認した上で、物件によって銀行を選んでいく
姿勢が欠かせません。