所得の多い方は、不動産を保有し、減価償却で所得を圧縮しましょうという
提案を受けることも多いのではないでしょうか。
この提案は具体的にどのような意味があるのか、考えてみましょう、
高額所得者が物件を購入するとどうなる?
給与の高い方が減価償却物件を取得するとどのような結果になるのか。
シミュレーションで確認してみましょう。
当初4年は年収2,000万円、それ以降1,000万円の高額所得者が、築25年の木造アパートを
1億円利回り9%で取得し、建物割合を70%とした。10年後に8千万円で売却。
借入は金利2%のフルローンが前提です。
たしかに大きなキャッシュ獲得効果があることは御理解いただけると思います。
これは、不動産から生じた赤字は、給与所得と相殺して課税所得を計算するためのものです。
このため、当初の4年間は、減価償却により赤字になっていますので、その赤字と給与を
相殺できているというわけです。
最初の4年間を取ってみると、530万円程度だった税金が50万円程度まで圧縮できています。
結果、480万円程度の還付を受けることができるというわけですね。
給与のみを受け取っていると払う必要がある480万円の税金を、不動産を保有すれば
取り戻すことができるのです。
この還付額は2つの効果により構成されています。
1つ目が、所得が圧縮されることによる効果、2つ目が、所得が圧縮されたことにより、適用される税率が下がったことによる効果です。
所得税は所得が上がるほど税率が上がります。ということは、所得を下げる
事ができれば、そもそも適用される税率自体を下げることも可能なのです。
減価償却が課税の繰り延べにならない理由
本来、減価償却は課税の繰り延べでしかなく、売却時の利益に課税されることで
損益のプラスマイナスはゼロであるはずです。
本来的には、減価償却自体に総キャッシュフローを増加させる効果はありません。
(単年度では増加させることもありますが、売却時にその分のマイナスが生じるはず)
しかし、個人保有の場合にはそうならないのです。
これは、個人に対する課税の方法が特殊であることに起因します。
個人の不動産については、保有時の損益は、給与と合算して税額を計算します。(総合課税)
つまり、不動産が赤字であれば、その赤字を給与と相殺して所得圧縮を図ることが
できるわけです。
一方、売却時は、売却益を給与と合算する必要がありません(分離課税)。
売却益に対し、短期譲渡なら39.63%、長期譲渡なら20.315%の税率で
課税されて終了です。
一般的には、この保有時と売却時で取扱が異なる状態はデメリットのほうが多いです。
なにせ、売却益を打ち消す手段がほぼなく、売却益に対する課税を免れることができません。
一方、高額所得者が減価償却後に売却する場合については、この制度は有益です。
先の例では、減価償却により所得を1,580万円から320万円に圧縮し、税金を
480万円程度圧縮しています。
この部分の税率は、38%程度になります。
一方、売却時の税率は、給与の額にかかわらず20%で固定です。
このため、毎年38%で節税し、納税は20%で行うため、この税率の差18%を受取超過で
終わらせることができるというわけですね。
つまり、税金を取り戻すサイドでは税率が高く、税金を払うサイドの税率を
低くできるのです。
しかし、実際はそう簡単ではない
このように、不動産を用いた所得圧縮は、上手く嵌まれば非常に大きな効果を発揮します。
しかし、実は上手く導入するのは意外に難しく、あまり効果を発揮していないケースも
散見されます。
これは、不動産を用いる上での留意点が非常に多く、その留意点を無視して導入すると
効果が発揮できないケースが多いためです。
この留意点は数が多いため、明日改て記載しようと思います。