不動産投資でデッドクロスを回避する方法

昨日はデッドクロスの発生原因について考えてみました。


しかし、皆さんの関心事は、発生原因ではなく回避方法であるかと思います。

この点を今回考えていきたいと考えています。

物件取得後の対応策

減価償却目的物件の追加取得

先日記載した通り、デッドクロスの根本原因は、減価償却費が
借入金の元金返済を下回ってしまうことにより発生します。

このため、減価償却費をとれる物件を追加で取得し、2物件の
トータルとして減価償却費と元金返済のバランスを回復することが考えられます。

ただ、この対策は減価償却目的物件の減価償却が終了すると、
2物件がどちらもデッドクロスを引き起こしてしまいますので、
よりキツイ状態になってしまいます。

このため、デッドクロスの顕在化を数年間先延ばしにするだけになります。

この猶予を得た数年間に、何らかの抜本的対策(売却など)を取ることになります。

借入金の繰上げ返済

減価償却費の減少をカバーするため、繰上げ返済により
元金返済を減少させるというのも有効な選択肢となります。

この選択肢はデッドクロスの根本的解決になりえますが、
ある程度の規模で繰上げ返済を行う資力が必要です。
また、繰り上げ返済による支出は経費にはなりませんので、
繰り上げ返済時点では大きなキャッシュアウトに苦しむことになります。

フルローン・オーバーローンを選択する投資家の多くがこの資力を
欠いているので、現実的には難しいのかもしれません。

管理コストの見直し

多くの物件で言えることなのですが、賃貸管理費や建物管理費、
あとは空室の現状回復費が大きすぎることがあります。
(要は、ぼったくられているのです)

このような場合であれば、管理費の見直しにより支出を削減し、
手残りキャッシュをセーブすることが考えられます。

管理費を削減する分利益は増えるので、税金は増えてしまうのですが、
それ以上に手許にキャッシュが残るので、取り組む価値はあるでしょう。

特に大型のRCであれば、建物管理費を大きく見直す余地がります。
エレベータメンテナンス、植栽選定、定期清掃の回数、これらの単価
全てゼロベースで見直してください。

物件の売却

最終手段は、物件を売却することです。
デッドクロスの発生した物件を借入返済が終了するまで
持ち続けることは大変つらいことです。

なにせ毎年マイナスのキャッシュフローが生じるのですから。

この状態を劇的に改善させる方法は、物件の売却しかありません。

腹をくくって持ち続ける

どうしようもないなら、持ち続けることです。

もちろん、不動産以外の収入からの補てんが必要になりますので、
非常につらいところではあります。

ただ、現実問題として他に対策がない場合、持ち続けるしかありません。

持ち続け、稼働率を上げ、経費を抑え、出血を可能な限り抑えながら、
元金返済が進むのを待つのです。

借入の元金さえ減れば、いつかは売却できるでしょう。

物件取得前の対応策

建物割合を合理的な範囲で上げる

売買契約書締結の段階で、建物金額を高めで
記載するよう交渉します。

正直なかなか難しいことが多いのですが、成功すると
建物を大きくとることができ、減価償却費を大きくすることができます。

これにより、元金返済と減価償却費のバランスが崩れにくくなるわけです。

建物付属設備を計上する

建物付属設備は、建物本体よりも償却期間が短いです。
築20年以上のRCであれば、おおむね15年以内で償却することも
可能です。最短では3年です。

このため、建物付属設備を償却している期間内は減価償却費が
大きくなり、元金返済とのバランスが維持されるようになります。

もちろん、これは諸刃の剣で、短い償却期間は、より急激な
デッドクロスを招来しますので、使い方が重要です。

減価償却期間を長くとる

多くの方が勘違いされているのですが、中古で購入した不動産の減価償却期間です。

中古資産の耐用年数として、以下の方法がよく用いられます。

中古資産の耐用年数 簡便法

残存耐用年数+築年数×20% または 法定耐用年数×20%

中古資産については、この方法で減価償却期間を決めるしか無いと思い込んでいる
人も多いのですが、そうではありません。

法定耐用年数を採用したり、見積もり耐用年数の原則法を採用することで、
減価償却期間は延長できる可能性も高いです。

借入期間を長く取る

借入期間を長くとると、毎年の元金返済金額も減少します。
このため、減価償却と元金返済のバランスが保たれやすいです。

金利の高低については、デッドクロスのみに着目すると、
意外と高金利も悪くありません。高金利であれば毎年の元金返済が
少ないので、デッドクロスになりにくいのです。

もちろん、支払額の増加により手残りキャッシュは少なく、
元金が減らないため、純資産改善スピードが遅く、投資全体
としてはいまいちになる可能性は高いですが。

頭金を入れる

頭金を毛嫌いされる方は多いのですが、頭金の効果は
非常に重要なものがあります。

頭金により、借入比率が下がり、元金返済金額が抑制されることで、
減価償却と元金返済のバランスが保たれやすくなります。

もちろん、頭金としてガツンとキャッシュアウトするか、
毎年チビチビとキャッシュアウトするかの違いではないかと
いわれるとその通りです。
投資効率が落ちるというのもその通りです。

しかし、毎年チビチビとキャッシュアウト、あるいはキャッシュインが
非常に少ないという状況は、意外と精神的に厳しいものです。

この精神的厳しさが、人をダメな方向に連れて行ってしまうことも多いのです。

表面利回りの高い物件を買う

極論してしまえば、表面利回りの非常に高い物件を取得できれば、
つまり、フルローンでも返済比率が非常に低ければ、理論上は
デッドクロスにもなりません。

再生物件などはこれに当たるかもしれません。

ただ、通常の中古物件で、デッドクロスを起こさない物件はなかなか
想定しずらいのが現実です。

元金均等返済で借りる

元金均等返済であれば、元金返済が一定であるため、
デッドクロスは起こりません。

それはそうなのですが、元金均等返済は当初の借入金返済が、
元利均等返済に比して非常にキツイです。

並大抵の利回りでは、元金均等返済に耐えられないのでは
ないかと思います。

正直、頭金を入れて借入を減らさなければ、元金均等返済
は難しいのではないかという印象です。

まずは現状の把握から

デッドクロスは、どんな物件でも発生しえます。

特に以下のような場合は、ほぼ必ず発生するでしょう。

  • オーバーローン、フルローンなど高い借入比率
  • 土地が広い、地価が高いなど、土地の価格が高い
  • 築古の建物で、減価償却期間が短い
  • 建物付属設備の割合が高く、その償却期間を短く設定した
  • 表面利回りが低い

デッドクロスは、様々な条件がかみ合い、物件ごとに様々な
タイミングで発生します。
このため、事業計画を作成し、いつデッドクロスが起こるかを正確に
把握し、そのための対策を立てねばなりません。

そのためには、事業計画の作成は必須と言えます。

結局、事業計画の作成が最も重要です。
つまり、その物件がいつデッドクロスを起こすのかわからなければ、
対策の取りようがないのです。

特に、物件取得後より物件取得前の方が対策が多いことも考えると、
物件取得段階での事業計画の作成をぜひ行うべきです。

借入期間や金利はどのようにとるのがベストか。
頭金を入れるべきか、入れなくてもよいのか。
デッドクロスを迎える前に売却するのか、長期保有するのか。
長期保有のためにどのような戦略を採用するのか。
物件の組み合わせでデッドクロスを回避するのか、あるいは繰上げ返済を追求するのか。

全ては事業計画を作成しないと考えることはできません。

事業計画は、銀行に見せるか否かにかかわらず必ず作成しましょう。

不動産投資の成否はそれにかかっています。

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