不動産投資をするにあたり、最も重要な知識は何でしょうか。
経験上、デッドクロスに関する知識が最も重要だと思います。
デッドクロスを説明できる不動産屋や税理士は少ないです。
ここを理解している人が少ないので、自分で理解するしかないのです。
不動産投資の成功のため、何よりも失敗をしないために、デッドクロスの原理は正確に理解しましょう。
ここを他人任せにすることはできません。
デッドクロスとは何か 発生原因
では、デッドクロスとは何でしょうか。一般に定義は二つあるようです。
- 借入の元金返済額が減価償却費を上回ること
- 法人税・住民税の額が税引き前キャッシュフローを上回ること
いきなり専門用語が多くわかりにくいかもしれません。
少し我慢して読み進めてください。
では、デッドクロスが発生する原因は何でしょうか。
それは、「キャッシュフロー計算と利益計算の違い」です。
まず、キャッシュフロー計算と利益計算の違いを見てみましょう。
以下のような物件の場合、キャッシュフローと利益がどのようになるか見てみます。
前提:築25年の1億円RC、表面利回8%、経費率30%
金利2%期間25年のフルローン、建物割合80%(札幌のRCのイメージですね)
お判りでしょうか?
①~③までの項目に違いはありません。
ただ、④と⑤の項目が違うのです。
借入金の元金返済(④)はもちろんキャッシュアウトです。
しかし、利益計算上は無視するのです。
一方、減価償却費(⑤)は、利益計算上マイナスしますが、キャッシュフロー計算上は無視します。
そして、法人税額は利益計算に基づき計算するのです。
キャッシュフローは税金計算上無視されます。
このように、キャッシュフローと利益は、元金返済と減価償却費の2点で異なるいうことがわかりました。
そして最大のミソは、「税金は利益により計算する」ということです。
つまり、元金返済額と減価償却費が近似すれば、税前CFと税前利益が近似します。
このため、税後利益と税後CFも近似するのです。
手取りキャッシュに税金が課税されるイメージとなり、キャッシュと利益がほぼ一致するのです。
デッドクロスが起こるとどうなる
次に、元金返済を減価償却より大きくしてみましょう。
先ほどの例を、建物割合50%に変更して計算します。
先ほどの例-1と見比べてみましょう。
建物が小さくなったので、⑤減価償却費が△2,963から、△1,852になっています。
費用が減ったのですから、⑥税前利益は637から1,748に増えるのは当然ですね。
利益が増えるということは、税金が増えるということです。
⑦法人税が△159から△437に増えているのもまた当然です。
では、キャッシュフローを見てみましょう。⑥税前キャッシュフローを見てみると…なんと、600で先ほどと変化ありません。
今回変更したのは減価償却費だけで、減価償却費はキャッシュフロー計算で無視するのですから、これも当然と言えば当然です。
ではどうなるか、そう、キャッシュフローは変わらないのに、税金だけ増えたのです。
結果、⑧税後キャッシュフローは、441から163に減ってしましました。
この状態を、私は「広義のデッドクロス」と呼んでいます。
つまり、元金返済と減価償却のバランスが悪くなることで、手元に残ったキャッシュに比べて、過大な税負担が生じているのです。
ただ、こうなってもすぐに大きな問題が生じることはありません。
税金はあくまで物件から生じるキャッシュフローで支払えており、税金を払ってもなお手元にはお金が残っています。
税金の納付を終えた後に、何だか意外とお金が残らなったなと思うくらいでしょうか。
しかし、この状態が進行すると、もう一つのデッドクロス、
「狭義のデッドクロス」が不可避的に発生します。
狭義のデッドクロスの発生
デッドクロスのもう一つの定義は、
- 法人税・住民税の額が税引き前キャッシュフローを上回ること
でした。この状態を、私は「狭義のデッドクロス」と呼んでいます。
「狭義のデッドクロス」は、先ほどの例-2のさらに未来に訪れます。
例-2の12年後、この物件の収支は以下のようになっています。(収入と経費は一定と仮定)
例-2との違いは明らかですね。
①②は変わりません。
ただ、③の金利は元金返済が進んだので、△2,000から△1,270に減りました。
代わりに、元金均等返済ですので④元金返済は△3,000から△3,730に増えています。
こうなれば、明らかですね。⑥税前CFは同じ600しかないのに、⑦法人税が△437から△620まで増加してしまいました。
結果、⑧税後CFは163から△20に減少してしまいました。
物件の毎月のキャッシュフローをすべて貯金しても、税金を払えないのです。
20千円を、別の収入で補う必要があります。
この例でマイナスが少ないので、別に大丈夫と思わないでください。
・大規模修繕に備える必要がある
・経年とともに家賃収入は下落し、経費は増加する
からです。これらの要素は簡易化のため考慮していませんが、実際の物件では必ず発生します。
また、12年目から、借入金を返済し終わる25年目までずっとキャッシュアウトが続くことになります
正直、この状態で持ち続けることは大変にしんどいです。
ですので、現実はさらに悲惨な状況になると想定されます。
最悪、不動産のキャッシュアウトを他の収入(給与、年金、他の事業)で賄えない場合、自己破産の可能性すら出てきます。
デッドクロスを避けるためには、何をすればよいのか、この点は、以下記事にまとめています。