不動産投資においては、表面利回りは非常に重要な指標です。
しかし、それに劣らず重要な点が資産価値です。
資産価値を重視する投資というのもありえるのですが
どのような点で資産価値重視の投資が優れているのか見てみましょう
資産価値とはなにか
資産価値とは、つまり土地の価格のことです。
土地がどの程度の坪単価で取引されているのか、
正確に知ることは困難ですが、ある程度類推することは可能です。
特に、路線価ではなく、実勢価格ベースの土地値に注意しましょう。
というのも、特に地方においては、路線価ベースの土地値が実勢価格を
上回る場合があるのです。
積算が高いので、意外と銀行評価は出るのですが、実は土地の値段としては
それほどでもないという例が多くあります。
このような場合、見込んでいたよりも資産価値がなかったというようなことになりがちです。
また、特に首都圏では、路線価が実勢価格を大きく下回る場合もあります。
このため、実勢価格ベースの土地値にも注意するようにしましょう。
資産価値重視のメリット
債務超過になりにくい
債務超過とは、資産を負債が上回っている状態のことです。
このような状態を回避するためには、資産が大きい状態が維持されることが
重要になるのですが、土地が大きい物件は有利です。
次の例を見てください。
1億円の築25年の表面利回り9%RC物件、金利3%30年のフルローンで、
土地の割合のみを80%か20%に変更し、純資産がどのように推移するかを図示しています。
土地が70%のケースでは、キャッシュフローはあまり出ていません。
デメリットで記載していますが、購入当初からデットクロス状態ですので、
税金の負担が重く、税金支払後でキャッシュ・フローがあまり残らないのです。
一方、純資産は右肩上がりで上昇しています。
つまり、資産の下落が少なく、借入金の元金が減少していくので、
結果的に純資産が拡大するのです。
この拡大した純資産は、物件売却時に現金として回収できるでしょう。
一方、土地を20%としたケースでは、物件からのキャッシュフローは出ていますし、
借入の元金も返済しているのですが、建物事態の価値も大きく下落していきます。
このため、キャッシュフローが出ているとはいっても、それは建物の価値を
取り崩しているに過ぎません。
純資産はキャッシュフローが潤沢なためマイナスにはなりませんが、
その拡大スピードはとても遅いです。
このため、売却時に大きく現金を回収することは難しく、
売却時のキャピタルゲインを得ることは難しいかもしれません。
というのも、建物は経年で劣化し、価値が下落していくのに対して、
土地値の高い物件は資産価値が土地の値段以下には下がらないんからです。
このため、持てば持つほど純資産が増加し、財務状態は改善されます。
売却時の値下がりが少ない
建物は経年とともに値段が下がります。
しかし、土地は値段が下がりません。もちろん、相場の上下はあるでしょうが、
一定程度以下にはならないという想定はできるのです。
もちろん、リーマンショック後などの際には、土地値より下がることは
ありうることではあります。
しかし、通常の市場を想定する限り、土地値は有効なのです。
売却時に値下がりしていると、元金返済分のキャッシュを取り戻せないとは
以前書きましたが、元金返済を取り戻すためには、資産価値の値下がりが
小さい必要があります。
このため、保有期間中に拡大した純資産を売却時に回収できる可能性が高く、
売却時に大きく現金を回収できるのです。
資産価値重視のデメリット
資産価値を重視した場合の問題は、なんといってもキャッシュフローが出ないことです。
減価償却費が取れない
資産価値が高い、つまり土地値が出るということは、取りも直さず
建物の金額が小さいということです。
建物が小さいと、必然的に建物割合が小さいため、減価償却費が大きく取れません。
このため、必然的に購入当初からデットクロスに陥っている可能性が高いです。
このため、税負担はキャッシュフローに対して高く、ある程度資金余力がなければ
持ち続けることは難しい可能性もあります。
表面利回りが低い
資産価値の高い物件は、取りも直さず首都圏にある物件です。
あるいは、地方大都市圏の好立地などでしょうか。
この場合、表面利回りはそれ相応に低くなっています。
表面利回りが低いので、物件規模に対してキャッシュフローが出にくいのです。
23区内やその近隣ですと、7%の利回りで物件を探しても難しいですね。
築古の木造や重鉄ならたまにありますが。
このため、減価償却費が取れない点もあいまって、保有期間中に
キャッシュフローが出ないのです。
まとめ
資産価値狙いの投資は、非常に保守的な投資です。
保有期間中はあまりキャッシュが出ませんが、売却時に値下がりもあまりしないので、
元金返済分のキャッシュを売却時に取り戻すことができます。
つまり、損はしにくく、確実にリターンを狙えます。
ただ、保有期間中のキャッシュフローが薄いため、手許現金が少ない場合は
保有を耐えることが難しいという点で資産家向きの投資方法かもしれません。