節税目的の物件取得 本当に節税になってますか?

高額所得者の方が、築古の物件を購入し、減価償却で
所得税の節税をしようとするケースは多いです。

数千万円の築古木造を取得しても、実は節税には殆ど役立たない
というケースは大変多いのです。

なぜそうなるのでしょうか?

節税目的物件で陥りがちなパターン

節税目的といえば、築古の木造アパートが王道ですね。

建物を4年で償却可能で、かつロットも小さく、出口を取りやすい。

ここで多くの人が考えるのが、「土地値がどうか?」という点でしょう。

なにしろ、耐用年数超えの物件は銀行の融資がつきづらいので、
償却を取り終わった後にどのように処分するかが重要になります。

償却が終わった物件をそのまま保有すると、かなりきついデットクロス
となりますし、不動産以外の所得が高いままだと、税金で大変です。

この点、土地値があり高い資産価値を持つ物件であれば、出口は
取りやすいであろうというわけですね。

それはそうなのかもしれませんが、実際に購入された方の申告書を
拝見すると、ほとんど節税になっていないパターンが多く見られます。

なぜそのようなことが起こるのでしょうか?

減価償却がそもそも取れない

とにかく土地値の築古物件を購入したいという意志が先行し、
ようやく物件を購入できた。

そして、税理士から確定申告書が帰ってくるとびっくり、
何の節税にもなっていない。

このような問題が起こる原因の一つは、物件の減価償却費がほとんど
取れていないからです。

収益物件を構成する土地と建物のうち、減価償却の対象となるのは
建物のみです。

一方、首都圏の高立地で築古の物件を取得した時、投資総額に占める
建物の割合は、下手をすると10%などになってしまいます。

これは、売買契約書に土地建物の金額を別掲しない場合、通常税理士は
土地と建物を固定資産税評価額で按分しますが、築古になると、建物の
割合はかなり低くなるのです。

また、再販業者などから購入した場合も、建物割合は低いことが多いです。
これは、建物の売却には消費税がかかるので、建物割合を高くしてしまうと
再販業者にデメリットが出るためです。
また、売主が通常の宅建業者であっても、契約書に記載する土地建物は、
固定資産税評価額で最初から按分されていることが多いです。

建物が小さくなる傾向は、土地の価値が高い場所ほど、
そして築古の木造などになると非常に顕著です。

城南城西エリアの土地値アパートでは、建物割合が一桁%になることもあります。

するとどうなるか。

建物割合が10%しか取れなければ、5,000万円の物件を購入しても、建物は
500万円にしかならず、これを4年で償却しても1年で125万円にしかなりません。

この状態では、流石に築古でも利益が出てしまいかねません。

 

この状態を回避するために最も安易な方法は、要するに土地の価値の低い
エリアで物件を購入することです。

ただ、そうなると物件の流動性の問題や債務超過の問題など、別の問題が
生じてきてしまいます。

非常に悩ましいですね。

土地利息を赤字から除外する

また、減価償却でかろうじて赤字になったとしても、その赤字がなくなって
しまう可能性も高いです。

土地等の負債利子の損益通算の特例(租税特別措置法第41条の4)という
規定が存在します。

これは、詳細は割愛しますが、個人の不動産所得が赤字となった際に、
その赤字のうち土地の取得に要した借入金の利子を、他の所得と損益通算
出来ないとするものです。

ちょっと複雑な規定なのですが、ざっくりいうと、借入金のうち土地部分から
生じる利子は経費にできないと理解頂くのがイメージしやすいと思います。
(正確な内容については、ご自分の税理士に確認して下さい)

そもそも、築古のアパートに対する投資は、融資する銀行が多くありません。
融資する銀行(ノンバンク)も、金利が高いケースがほとんどです。

このため、築古アパート投資の場合、利子が大きくなることが普通なのですが、
この利子が問題なのです。

つまり、借入金のうち、土地の取得に要した借入金の利子は経費にならない。
一方で、土地値アパートは土地値が大きいので、借入金のうち土地の取得に要した
部分も必然的に大きくなります。

するとどうなるか。

高い金利の銀行に支払っている利子の大半が、土地に紐付くものとして経費に
算入できないという事態が生じます。

これによって、減価償却によって結構大きな赤字が発生した場合でも、利子の大半
が経費にならないため、結局赤字がなかったことになってしまうのです。

この規定により、減価償却費が垂れ流し(つまり、経費にしたつもりが、土地利子と
相殺されて結局経費になっていない)になっているケースは本当に多いです。

しかも、譲渡時には減価償却後の簿価で譲渡税を計算するので、ダブルパンチです。

この規定は、存在を認識していない投資家も多いですし、そもそも税理士も知らない
ことがあります。

また、事前のシミュレーションで考慮されていないことが多いです。

注意が必要です。

節税目的物件の取得 実は高いハードル

このように考えてくると、築古物件を購入しての節税というのは、
意外とハードルが高いことがご理解いただけると思います。

築古を買えば良い!というものでもありませんので、事前の慎重な
検討が必要です。

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