最近不動産会社のセミナーなどを見ていると、純資産を増加
させる投資方法に着目するものが増えてきた気がします。
純資産を増加させる投資は、たしかに有効な方法なのですが、
一方で、それがキャッシュフローの出ない物件を買わせる
口実になっていないかが気になっています。
純資産重視の投資とは?
純資産重視の投資とは、財務諸表上の純資産の拡大を企図する投資方法です。
いかにフルローンで物件を購入し、表面利回りが低く、キャッシュフローが
出なかったとしても、その間の元金返済が進む限り、物件に貯金している
ようなものであって、その貯金は物件の売却時に顕在化する。
というのが純資産重視の理屈です。
この理屈で言えば、通常の投資家が重視するキャッシュフローの重要性
は下落し、逆にいかに物件の価格が下がらない物件を買うか、
いかに物件の価値を維持するかという点が重要になります。
近年キャッシュフローを重視しすぎるあまり、というかキャッシュフロー
だけしか見ていないので、大変な地方で物件を購入している人が多くいます。
この傾向を矯める目的もあって、不動産投資の儲けはキャッシュフローだけ
ではないとこのブログでも書いてきました。
しかし、最近不動産の営業マンが純資産拡大に適した物件です!
などと言っているのを聞くにつけ、ちょっと違和感を感じています。
それは、キャシュフローのでないスッテンテン物件を買わせる
営業トークに使われてしまっているのではないか?という疑念です。
それでも、キャッシュフローは重要
物件を購入するときに、土地値の出ている物件であれば表面利回りなど
考えなくても良いのかというと、決してそんなことはありません。
キャッシュフローの重要性は下がりますが、その重要性が失われることは
ないからです。
重要性がさがるというよりも、キャッシュフローと純資産のバランスを
確保するという表現が最も適切かもしれません。
私自身、純資産を重視して立地や資産価値を重視した投資を行っています
が、決してキャッシュフローを見ていないのではありません。
むしろ、キャッシュフローをかなり見ているといっても過言ではありません。
というのも、首都圏のある程度の立地であれば、資産価値が高くて当然
なのです。
実際、資産価値の高い物件などたくさんありますし、見つけるのに
苦労はしません。
しかし、その大半は私にとっては購入できない物件なのです。
それは結局、資産価値が高いだけでキャッシュフローが出ないからです。
資産価値の高い物件は往々にして低利回りです。都内なら5%とか6%とか。
これらの資産価値だけ高い物件の中から、いかにキャッシュフローを
得られる物件を探し出すかが大変なのです。
なぜキャッシュフローも重視するのか
土地値が出ているのであれば、売却時に元金返済を回収できるのだから、
キャッシュフローは二の次ではないか?と言われるかもしれません。
しかし、本物の大金持ちならともかく、キャッシュフローの出ない物件
を保有し続けることは実に大変です。
というか、不可能ではないかとおもいます。
元金返済による物件の含み益とは、あくまで売却しないと顕在化しない
一種バーチャルなものです。
その含み益にいかに自信があっても、売りたい時に大不況であれば
売れません。
そして、売れなければ現金にならないのです。
もちろん、売却価格の事前の想定は有るでしょう。それは重要です。
しかし、どのような値段で売れるのかは突き詰めれば売ってみないと
わかりません。
もし当初に想定した値段で売れない場合、今までキャッシュフローが
出ない状態で耐えてきたことは無駄であったということになります。
投資として失敗ではないでしょうが、成功でもありません。
このようなリスクを回避し、たとえ想定した出口を取れなかった
としても、投資として成功であったと言うためには、保有期間中の
キャッシュフローが必要なのです。
また、物件を保有すれば様々な気苦労があります。
雨漏りもしますし、原状回復で100万円超かかるかもしれませんし、
エレベータが壊れるかもしれませんし、空室が長引くかもしれませんし、
毎月滞納する入居者がいるかもしれませんし、駐輪場に近所の自転車
が停められているかもしれませんし、前の家のヤンキーの車がうるさい
というクレームが入るかもしれません。
大家さんとしてその全てに対応し、その結果通帳の残高が減少する
というのは、私はちょっと耐えられません。
「土地値のある物件です!利回りが低いですが、純資産が改善するので
オッケーです!」
なんて言われても、真に受けないようにしましょう。
もちろん「借入金を返し終わった30年後には収入を総取りです!」
なんて言う言葉も真に受けないようにしましょう。