不動産を長期保有する難しさ 税金と修繕

不動産を長期保有を前提にしている投資家は多いと思います。

ローンを30年で組んだとしても、その期間くらいは持ち切る考えです。

その考え方自体はありですが、しかし、いくつか障害があるのも事実です。

不動産の長期保有

不動産を保有する期間には様々な考え方があります。

即転売する考え方から、物件をローン期間程度は保有する考え方もあります。

現在は20年程度はローンを組むことが標準ですので、20年程度は物件を
保有するということになるでしょう。

もちろん、何もしなくてもお金が振り込まれる不労所得として捉えている
場合は、一度買った物件を手放すことはあまり良い考えではありません。
金の成る木をなぜ手放すのかという話になりますよね。

しかし、不動産には長期保有を阻害するいくつかの要因があります。

この要因をクリアできない限り、物件の長期保有は難しいのではないかと思います。

その要因とは、デットクロスと大規模修繕です。

デットクロス

不動産長期保有の最大の障害は、デットクロスです。

何度か記事にしましたが、デットクロスはあくキャッシュフロー上の
概念であって、デットクロス状態であっても、純資産が拡大している限り
負けではありません。

とは言いつつも、デットクロスは長期保有を前提にすると大きな問題があります。

純資産の拡大こそが投資の成果ですが、純資産のうち、物件の含み益は売却
によって初めて現金化する事ができます。

物件の含み益が拡大しているとしても、キャッシュとして手元にない限り
他の用途には使用できません。

特に、始めの1棟目の物件の場合などは、投資家自身も手許現金を潤沢に
保有していないケースが多いでしょう。
このようなケースでは、次の物件の頭金や、日々の運営コストのためにも、
手許現金の拡充が優先課題になるでしょう。

その場合、純資産がいくら拡大したところで、それが含み益である限り
投資家にとってあまり使い勝手の良いものではありません。

10年で減価償却が終了した場合、その後の保有はなかなかつらいことになります。
減価償却が終わると、デットクロスは必ず発生します。

おそらく、税後キャッシュフローはほとんど出ないか、下手をすればマイナスでしょう。
その後、ローン期間が15年あったとすると、15年間もキャッシュが出ない
物件を保有し続けることになるのです。
税金を払うとキャッシュが去年より減ってしまう状況が続くことになります。

このような状況を、手元資金が潤沢でない投資家が耐えることは恐らく難しいでしょう。
この場合、純資産が拡大していることはそれほど大きな意味を持ちません。
今、現金が必要なのですから。

他に潤沢なキャッシュフローが出る物件を保有しているような場合は、
そのキャッシュで保有を耐える事もできるでしょうが、これは複数棟を
計画的に保有することが重要になります。

または、純資産の拡大した物件に抵当を設定し、借り入れをすることも
できるでしょう。

しかし、これが土地値物件などの担保評価が出ているような場合であれば
良いのですが、そうでない場合はこの手段も取ることができません。

物件を長期保有するに当たって、デットクロスをどう対策するかは
非常に重要なポイントになります。

大規模修繕

物件で長期保有の場合注意が必要となるのは、大規模修繕費です。
具体的には、屋上防水工事と外壁塗装費です。

小さな物件であっても、屋上防水と外壁塗装をフルで行った場合
数百万円はかかるでしょう。

物件の保有によるキャッシュフローが大規模修繕を賄うまでに
蓄積されるのは程度の期間を要します。

フルローン前提であれば、年間の税後キャッシュフローは物件価格の2%程度
あれば良い方でしょう。

結果、5,000万円の物件で、年間100万円の税後キャッシュフローがあったとしても、
500万円大規模修繕に要するのであれば、5年分のキャッシュフローが一気に
吹き飛ぶことになります。

小さな物件でこの程度ですので、大規模RCになると三桁万円になる恐れも十分にあります。
三桁万円の大規模修繕費を税後キャッシュフローで賄うには、一体何年かかるのでしょうか?

大規模修繕済みの物件であったとしても、15~20年後にはもう一度しなければなりません。

15年後にするのであれば、その15年後に向けて税後キャッシュを積み重ねて
いかねばなりません。

このときに大きな問題になるのが、デットクロスです。

デットクロスになっていればキャッシュが出ませんので、その状況で大規模修繕まで
発生すると弱り目に祟り目という状況になってしまいます。

物件の長期保有は、金のなる木を持って左うちわというものでは全くありません。

デットクロスをコントロールしつつ、大規模修繕のためにキャッシュを積み重ねて
いかねばならないのです。

長期保有は山あり谷ありということがお分かりいただけると思います。

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