不動産投資における「失敗」を考える

不動産投資の失敗とは何なのでしょうか?

不動産投資は非常に手堅い投資である一方、失敗してしまうと、なかなか大変なことになるのも事実ではあります。

このため、この記事を読まれている方も、不動産投資で失敗したくない、という思いがおありなのだと思います。

今回は、不動産投資における失敗について理解していきましょう。

不動産投資における失敗とは?

まずは、不動産投資における失敗の意味を考えてみましょう。

不動産投資は投資という名前がつく通り、基本的にはお金を増やす目的で始めます。

もちろん、当たり前ですよね。

始めたときよりもお金が増えなかったのであれば、当然投資としては失敗と言えるでしょう。

ずばり、不動産投資の失敗とは、始めたときよりもお金が増えない、あるいは、お金が減ってしまうということに尽きます。

ただ、始めたときよりもお金が減ってしまい、失敗だという話は、特段不動産投資に固有の失敗ではありません。

株式投資、投資信託、先物投資、ワイン投資、世の中には様々な投資がありますが、どのような投資であっても、最初よりお金が減ってしまう失敗、つまり「元本毀損」のリスクは常に存在します。

元本毀損のリスクが無い投資は、銀行預金くらいではないでしょうか?

つまり、始めたときよりお金が減ってしまう失敗は、不動産投資に限らず、あらゆる投資でありうることです。

では、なぜ不動産投資における失敗がそれほど恐れられるのか。

それは、個人的には、不動産が流動性に欠ける現物資産であるという点だと考えています。

簡単に言い換えると、不動産は売ろうと思ってもすぐに売れない、ということなのではないかと思います。

不動産投資における失敗の根源は、おそらくこれでしょう。

お金が減るのに、物件を売れないという最悪の状態

つまり、不動産投資の最も避けるべき失敗とは、お金が減るのに、物件を売ることができないということです。

通常の投資ではこのようにはなりません。

例えば、株式投資であれば、予想外の値下がりが発生し、損失を負う事自体はそれほど珍しい事ではないでしょう。

しかし、株価の下落が止まらないと考えるのであれば、それを売却(損切り)することによって、損失拡大をストップさせることもできます。

損切り千両という相場格言がある通り、想定外の自体が起これば損切りをして資金を温存し、次の機会を狙うわけです。

一方、不動産を購入しても、想定外の事態によって損失が拡大していく可能性は当然あります。

ただ、不動産はそのタイミングですぐに売ろうとしても、売れない可能性が高いです。

不動産には流通市場がありません。市場で売却するのではなく、自分で買い主を見つけてくる必要があります。

また、買い手と条件が折り合わなければ当然売ることはできません。

このように、始めたときよりもお金が減ってしまうという元本毀損のリスクに、不動産の流動性の乏しさが組み合わされると、とても大きな失敗となります。

それでは、この「始めたときよりお金が減る」「売りたいときに売れない」という失敗をそれぞれ見ていきましょう。

不動産投資における失敗1:お金が増えない、お金が減る

①融資を受けて買う=毎月の定期支払がある

不動産を購入して、なぜお金が増えない、逆にお金が減ってしまうという減少が生じるのでしょうか?

それは、不動産投資をする際に、銀行から融資を受けて購入することが大半だからです。

だいたいの不動産は小さい物件であっても、数千万円程度はしますから、これを融資なしで買うのは正直ハードルが高いですよね。

このため、購入資金の全部(フルローン)や一部を融資で賄うわけです。

もちろん、融資を受けるわけですから、毎月返済しなければなりません。

この、返済により毎月支払う金額が発生するので、毎月返済金額を下回る収入しか得られなければ、自分の貯金を取り崩して返済に充てなければなりません。

そうなると、始める前よりもお金が減ってしまうのです。

そして、さらにその状況が続く可能性もあります。

②空室で収入がない

もちろん、不動産投資とは、賃貸用不動産の家賃収入を得る投資です。

当然ながら、この賃料収入が得られるかどうかは、自分の購入した物件にきちんと入居者がつくかどうかによってのみ決まります。

不動産投資における収入は、基本的に入居者が払ってくれる家賃のみです。

ですので、入居者がいない空室の状態になってしますと、賃料収入が得られません。

一方で、①に記載しましたが、融資を受けて物件を購入すると、毎月固定の支払いが発生することになります。

空室により収入が得られないとしても、銀行が返済を待ってくれることはありません。

毎月約定日に約定金額を返済する必要があります。

そうなると、銀行への返済を自分の手元資金から行っていくということになるでしょう。

貯金があるうちはなんとかそれで耐えられますが、空室が改善し、家賃収入が得られない限り、いずれ限界が来るでしょう。

このように、空室で収入が発生しないというのは、不動産投資における根本的な失敗になります。

③経費が想定よりかかってしまう

②で記載したように、不動産投資は家賃収入を得るための投資になります。

融資を受けて物件を購入する場合は、家賃収入と銀行への返済の差額が自分の取り分ということですね。

しかしながら、実はもう一つ考えなければならない要素があります。

それは、不動産から発生する経費ですね。

例えば、入居者が退去したあと、その部屋が想像以上に傷んでいた場合は、どうなるでしょう?

傷んだ部分を修繕しなければ、次の入居者が入ってくれません。

このため、退去後には次の入居者のために原状回復をしなければならないのです。

例えば3LDKといった広めの部屋になると、この原状回復だけでもなかなかの金額になることもあります。

また、物件はいずれ大規模修繕をしなければなりません。

建築されてから、建物自体も時間とともに傷んでいきます。

屋上の防水工事が劣化してくると、雨水が建物に浸透し始め、入居者の住んでいる居室にまで到達します。

そうすると、この屋上の防水工事を再度行わなければ、入居者が退去してしまいますし、次の募集も困難になります。

敷地内に立木がある場合は、定期的な剪定が必要になるでしょう。

夏になると木はかなり枝を伸ばすので、道にはみ出て近隣からのクレームが発生したり、入居者の迷惑となり、同じくクレームの原因になります。

ですので、不動産には一定の維持経費が必須なのです。

この維持経費が家賃収入を上回ってしまうことも有るでしょうし、たとえそうはならなくても、維持経費+銀行返済が家賃収入を上回ると、いずれにせよ手元の貯金から補填する他ありません。

街中でたまに、ボロボロになって放置された建物をたまにみることがあるでしょう。

あれは、結局のところ、オーナーが維持経費を支払えなくなって放置されたものなのです。

そうならないためにも、不動産オーナーは建物や敷地が使用可能な状態で維持しなければならず、そのためにはどうしてもある程度の経費が必要になります。

不動産投資における失敗2:物件売却による精算ができない

上記のような状況が生じると、不動産を保有していてもお金が減っていくことになります。

これは、実際のところかなりつらい状況です。

資産形成のために始めた不動産投資が、逆に資産を食いつぶしていくのですから。

このため、収支改善の努力を行ってもなお、キャッシュフローの状況を改善できない場合、売却により損切りを行う、という判断も出てくるでしょう。

ただ、損切りの決断をしても、損切りできないかもしれないのが、不動産投資の怖い部分です。

では、なぜ損切りができないのかを考えていきましょう。

高値購入しているので、買い手がつかない

損切りしたくてもできない理由はかんたんです。

物件が売れないからですね。

これは、物件をあまりに高値摑みしている場合に良く見られます。

自分が買った値段が相場をはるかに上回るので、買った値段で売りに出しても買い手がいない、ということになります。

この「相場」は、金融機関の融資姿勢でも変動するので、要注意ですね。

例えば、数年前までスルガ銀行が全国の物件に融資をしていたので、地方物件が異様に高値売買されていました。

青森の田んぼのど真ん中にある築30年の鉄骨物件が利回り8%とか。。。

率直に言って、売ろうと思っても買い手はいないでしょう。

そのような特異な融資姿勢であったスルガ銀行が退場して以降、地方の物件はほとんど買い手がいない状況になってしまい、スルガ融資で物件を購入された方は出口が取れない状況に陥っています。

売却できても、借入金を全額返済できない

不動産投資は通常融資を受けて物件を購入するのですが、融資を受けると、土地と建物に銀行の抵当権が設定されます。

つまり、物件を売却しようとすると、この物件に設定された銀行の抵当権を削除しなければなりません。

では、どうすれば削除できるか。

それは、銀行から借りたお金を耳を揃えて返済すれば削除されます。

問題は、物件を売却しても、借りたお金を返済できないケースですね。

例えば、1億円の融資を受けて購入してた物件が、8千万円でしかうれないとどうなるでしょうか?

売却による資金は8千万円しかありませんので、1億円の融資を完済するためには、2千万円を自分の貯金しか払うしかないでしょう。

では、2千万円の貯金がなければどうなるのでしょうか?

そうなると、物件に設定された抵当権を削除できないので、そもそも売却自体ができません。

このように、不動産投資とは、他人の資金を利用して行うものですから、他人の資金を返済できない限り、売却することすらできないのです。

お金が出ていく状態を、精算できないと、、、

このように、不動産というものは、売りたくなったからと言って売れるものではありません。

しかし、上でみたように、持っているだけでお金が出ていってしまう状況も発生しうるわけで、そうなるとどうなるのでしょうか?

この2つが組み合わさると、保有していても儲からない、または資金流出してしまう物件を、売るに売れないので保有し続ける、ということになります。

こうなると、先には自己破産が見えてくる状況ですね。

不動産投資で失敗しないための鉄則

不動産で失敗しないための鉄則が以上から明らかになるでしょう。

収支がプラスになるか

まずは、収支がプラスになるかどうかです。

もちろん、収支がプラスにならない、と事前に思って物件を買う人はいません。

皆さん、意図せず収支がプラスにならないのです。

物件にはどのようなコストが現状かかっているのか、将来どのようなコストがかかりそうなのか、入居率はどのようになりそうなのか、どのくらい空室になると資金流出が生じるのか

このあたりは、事前に検証できることです。

不動産投資で失敗した方の物件は、収支シミュレーションを作ってみると明らかに収支が回りません。

シミュレーションでわかるということは、購入前に概ね判断できるということです。

事前にシミュレーションをすれば、意図せず収支がマイナスになるという状況は、基本的に避けられます。

売却できるか(流動性を確保できるか)

もちろん、収支がマイナスになろうとなるまいと、物件をいつでも売却して不動産投資を終了できるかどうかは重要です。

物件を購入してすぐには売却は難しいとしても、購入後何年かたつと、残債が減って売却しやすくなってきます。

何年後には残債がいくらになっているから、いくらで売ればこのくらい資金が残るな、その時点では、築◯年だから、◯銀行でこのくらいの融資がつくから、十分売れるだろう。

というような事前検証は、購入前であっても十分可能です。

最低でも収支がプラスかは確認したい

収支がプラスになるか、売却できるか、どちらも確認できれば万全といえますが、売却可能性はそのときの経済情勢や銀行の融資姿勢によって大きく左右されます。

つまり、事前に確認しても、将来いざ売ろうとすると、売れない、ということは有りえます。

そういう状況であっても、収支がプラスなのであれば、保有継続という判断が可能ですから、やはり重要なのは収支がプラスの状況を維持できるかどうかでしょう。

収支は事前にシミュレーションすれば十分確認できますから、最低でもその部分だけは確認したいですね。

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