不動産投資と株式投資はよく比較されます。
同じリスクを取った資産運用の一環として、その特徴やメリット・デメリット
が比較されることが多いように感じます。
どのような点で相違があり、不動産投資にはどのようなメリットがあるのか、
考えてみましょう。
不動産投資と株式投資の比較
不動産投資はあくまで投資です。
というか、世の中の事業は全て投資です。
ある一定の金額を投下し、それ以上の収入を得る。
そして、その収入が投下資金を上回っていれば儲かったし、
下回ったなら損をしたということです。
その収入が、事業収入だろうが売却収入だろうがどうでも
いいことではあります。儲かれば良いのです。
では、不動産に資金を投下することは、株式やREITなどの金融商品
に資金投下することとどのように違うのでしょうか?
そして、株式投資ではなく、あえて不動産に資金を投下する
メリットとは何でしょうか?
ちなみに、株式を短期間で売買する行為は投資ではなく投機ですので、
ここでは比較の土台に乗せません。
あくまで株式を長期投資として行うこと考えての比較です。
株式投資と株式投機を混同し、かつ株式投機と不動産投資を比較して
しまっている記事などもありますが、注意しましょう。
投機はバクチであって、比較すべき対象はパチンコや競馬、ルーレットです。
株式投資とは?
不動産投資と株式投資は同じ「投資」と呼ばれますが、根本的に異なるものです。
株式投資は、あくまで資金の提供と、そのリターンの受け取りです。
なぜリターンが生じるのかと言うと、資金提供先の会社が頑張って利益
を上げてくれるからですよね。
その利益を配当金として投資家に還元したり、株価が上がったりするので、
儲かるというわけです。
株式投資とは、結局の所がんばっている他人に資金を預け、他人に運用してもらい、
そこで出た儲けを受け取るというものです。
資金を預けた他人はそれを様々な手段で運用します。工場を建てたり、人
人件費として使ったり、新たなサービスを開発したりします。
それはすべて、他人から預かったお金以上の収入を得て、利益を出すためです。
そこで、株式投資に必要なのは、自分の資金を預ける相手が、本当に儲けること
のできる会社かということでしょう。
根本的には、資金を預けて運用してもらうという他力本願的な姿勢です。
このため、資金を預けた他人が、うまくその資金を運用し利益を出せない場合、
投資家たる皆さんにできることは、その資金を速やかに回収することだけです。
自分で乗り込んで、利益をだすように努力するということはふつうしませんよね。
不動産投資とは?
では、不動産投資とはどのような行為でしょうか?
皆さんは、銀行から資金を調達し、それを持って不動産を購入します。
その上で、不動産の運営から利益を挙げ、銀行に資金調達の対価として
金利を支払い、残ったものが自分の利益です。
これは、先程の株式投資の場合と比べるとどうなっていますか?
そう、これは、株式投資で資金を提供される側の会社が行っている行為ですよね。
つまり、株式投資で株を買った会社が行っている事業そのものです。
株式投資においては、会社は皆さんや銀行から資金を集め、それを工場や
人件費に投下し、それ以上の収入を得て、利益を資金を預けてくれた皆さん
や銀行に分配しているのです。
不動産投資においては、銀行と「自分」から資金を集め、それを不動産に投下し、
それ以上の収入を得て、利益を銀行と「自分」に分配するのです。
結局、自分が投資家であり、かつ同時に事業を遂行する会社そのものなのです。
ですので、不動産投資において必要なのは、
「どの会社に資金を預ければうまく儲けてくれるか」
という一種他力本願的な目利き力ではありません。
「どのような不動産を購入し、どのように運営すれば、利益を最大化できるか?」
という事業者としての目利き力が必要になるのです。
不動産投資のメリット
不動産投資は、株式投資とは根本的に異なり、事業なのであるとは
ご理解いただけるでしょう。
では、事業としたときのメリットとはどのようなものでしょうか?
素人も参入しやすい事業である
これが、恐らく最も大きなメリットでしょう。
不動産投資、つまり賃貸用不動産の購入は、不動産賃貸業という
事業を行うということなのです。
一般的に不動産「投資」と呼ばれているため、株式やREITとどっちが
有利かなと考えてしまいがちですが、そこは前段の通り本質とずれています。
不動産投資は、確かに投資ですが、「事業投資」に属する経営行為です。
本来比較すべきは、例えばコンビニを自分で経営する、コインランドリー
を経営する、パン屋やラーメン屋を経営するというような、他の経営行為
と比較すべきです。
そのように考えると、不動産投資のメリットが明らかになってきます。
1.極めて普遍的なサービスなので、才能が不要
居住物件は、基本的に運営に特殊な才能は不要です。
それは何故かと言うと、住む家という人間にとって極めて根本的
なサービスを提供しているからです。
住む家は誰にとっても必要ですし、生活の場ですので、他の製品や
サービスに求められる不断のイノベーションや革新は不要です。
むしろ、他の部屋と比べあまりにも革新的にしてしまうと、逆に入居者
から避けられたりもします。
いままでどおりのことを今までどおり続ければ、基本的には運営できる
のです。
2.外部協力業者が豊富
入居者の募集や建物の維持管理、部屋の原状回復などやるべきことは多いですが、
その作業のほぼすべてを外注することができます。
つまり、運営のオペレーションをほとんど外注できてしまうわけです。
それでも、コンビニのオーナーのように売上の多くを上納金として
召し上げられる恐れはありません。
管理会社に依頼すれば通常は家賃収入の5%でほとんど代行してくれます。
これほど格安でオペレーション業務を外注できる事業というのは、他に無い
のではないでしょうか?
また、外注できる業者にしても、相手が一見さんの素人であっても仕事の
依頼をすることができます。
新規取引にあたって、これまでの事業実績など一切問われないという点も、
不動産投資の特異な点といえるでしょう。
3.家賃収入の安定性
家賃収入というものは、入居者がいれば毎月定額入ってきます。
入ってこないとすれば、入居者がいない、つまり空室になっている場合のみです。
空室さえでなければ、毎月一定の収入が必ず発生するのです。
ここに、オーナーの経営努力はほとんど必要ありません。
毎月新しいキャンペーンや広告、リピート率の増加策に奔走する必要が無いのです。
気分のいいときも悪いときも、体調を崩して寝込んでいたとしても、家賃収入は
賃貸借契約に基づき入ってくるのです。
そういう意味で、ストック収入と言えます。
事業なので、融資を受けることができる
不動産投資のメリットは、前段でも少し触れましたが、銀行から融資を
受けることができます。
株式投資や、REITを購入する際に融資を受けることは決してありません。
銀行は、本来このような投資には融資をしません。
では、不動産にはなぜ融資が出るのかというと、ここにある大前提が
あるからです。
つまり、前段で記載したとおり、不動産投資というのは、不動産賃貸業という
事業であるという大前提があるので、融資が受けられるのです。
また、不動産は、銀行からの資金調達それ自体が、通常の事業に比べ
容易な部類に入ります。
なぜかといえば、不動産にそもそも担保としての価値がありますし、
そのストック収入としての安定さを金融機関も認識しているためです。
通常の事業の場合は、担保に提供できるものがほとんど無いケースが
多いので、融資を受けることはなかなか大変です。
自分のこれまでの経験や事業計画を銀行に納得してもらわなければなりません。
いきなりずぶの素人がお金を借りるなど普通は不可能なのです。
しかし、不動産はずぶの素人でもお金を借りることができます。
これは、事業なのですが、オーナーに事業者としての才能が必要ないし、
ストック収入だし、かつ担保も取れるので、融資先として非常に優秀
だからです。
不動産投資単独で評価してもらえる
皆さんは、キャノンの株式を購入するとき、キャノンの社長が資産を
どれだけ持っているか気にするでしょうか?
キャノンの社長が、キャノンの給与以外にどれだけ収入を得ているか気にしますか?
気にしないですよね。つまり、キャノンという会社の事業性のみを
見て、資金を投下しているはずです。
これは、不動産投資の場合も該当します。
不動産投資は事業なので、決算書で利益を出し続けることによって、
また、手元資金を蓄積することによって、外部(銀行)からの評価を
どんどん上げることができます。
これは、不動産投資はあくまで事業ですので、事業者としての評価、
事業主体としての評価をどんどん上げていくことができるためです。
もしろん、不動産の運営は誰でもできますが、やはり努力(才能ではない)
次第で運営成果に差が出ますし、良い運営成果を示せれば、それだけ優れた
事業者として見てもらえます。
そうなると、追加で融資をしてもらえる可能性も出てきます。
この部分に、自分のサラリー収入や個人資産はあまり関係ありません。
もちろん、あったらあるに越したことはないのですが、いまサラリーや
資産を持たない人であっても、事業者としての腕を示すことができます。
これは、努力さえすれば誰でもできることです。特別な才能は不要です。
株式投資で一発当よりも、はるかに堅実な道で夢があると思います。
一度仕組みができれば、かなり安定する
不動産投資は、努力さえすればだれでもできるものです。
そして、その努力は不動産を取得してずっと必要というわけではありません。
だいたい1年もすれば、保有した不動産の勝ちパターンというのが見えてきます。
どのような修繕をし、どのような設備を入れ、どのような条件で募集すれば
入居してもらえるかということがわかってきます。
また、管理会社などの外注業者との意思疎通もスムーズになりますので、
自分があれこれと細かく指示しなくても、こちらの意にそったことを
一定程度であれば勝手にしてくれるようになります。
そうなってくると、ほとんどすべての運営が自動で行われる状態に持っていく
ことができるのです。
このような状態は、通常の事業ではちょっと考えられないことです。
不労所得ではないし、お金がチャリンチャリンでもない
今まで見てきたように、不動産投資は、決して不労所得ではないし、お金が自動に
チャリンチャリンというものでは決してありません。
あくまで、不動産投資というのは、自分が事業主体となって事業を行っていく
ということです。
果報を寝て待て的に、何もしなくても収入を得ることができるというものでは
ありません。
むしろ、それは株式投資に該当する考え方でしょう。
ただ、様々なリスクや努力は必要ですが、努力によって乗り越えられるし、
外部の協力も仰ぐことができます。
すべてを自分の力で解決する必要はなく、むしろほとんどの課題やリスク
を乗り越えるノウハウを持った人がたくさんいるので、そこに依頼を
すれば良いのです。
過度な楽観も危険ですが、過度な悲観も実態を見誤ります。
もう一度、株式投資と比較すると
結局、不動産投資と株式投資を比較すると、以下のように整理できるでしょう。
「資金を他人に運用してもらうのか、自分で運用するのか」
資金を他人に運用してもらうのが、まさに株式投資です。
投資家は資金のみ提供し、あとは利益が出るのを寝て待つだけです。
他人が上手くやれば儲かりますし、他人が下手をこけば損をします。
損をしたなら、さっさと資金を引き上げて、他の投資先を探しましょう。
資金を自分で運用するのが不動産投資です。
投資家は資金を提供し、加えてその資金を運用し利益を最大化する責任を負います。
自分が上手くやれば儲かりますし、自分が下手をこけば損をします。
そして、損をしたからといって簡単に撤退はできません。
自分が会社そのものなのですから、立て直しの努力が必要です。
このように考えると、忙しいサラリーマンは不動産投資が向いているとか、
不動産投資は他人任せの不労所得でラクチンだとか、そような観点での
比較は全く無意味とご理解いただけるでしょう。
他人任せの資金運用をしたいなら、株式投資です。
自分はお金を出すだけで、あとは見守るだけです。
自分で主体的に資金運用をしたいなら、不動産投資はおすすめです。
才能は不要で、努力次第で誰でも儲けることができる稀有な事業です。
(融資を受け、レバレッジをかけるかは別問題です)
私自身、最初は不動産投資が事業であるという点に二の足を踏みましたが、
現在ではむしろ自分で様々な意思決定ができる不動産投資を実に気に入っています。
その結果、不動産投資を第二の本業にしようと取り組んでいるところです。
どんどん不動産賃貸業者としての実績を積んでいきたいですね。