銀行の考える2種類の債務超過 BSとCFの観点

銀行と話していると、すでに保有している物件が重荷になって、追加で融資できない
というような話をよく聞きます。

それには色々な意味が含まれているのですが、主として、2種類の考え方があるようです。

それは、バランスシートの毀損と、キャッシュフローの毀損の2種類です。

バランスシートの毀損

まずはバランスシートの毀損です。

持っている資産を銀行基準で評価し直し、それと借入金額を比較します。
その上で、借入金額が資産額よりも大きければ債務超過であるというわけです。

この債務超過の定義は多くの方がご存知だと思います。

つまり、現時点の断面を見たときに、資産よりも負債の方が大きいということです。

これを回避するためによく言われる方法が、「積算の出る物件を買いましょう」
ということですよね。

この考え方は所謂「光速投資法」で言われることですので、多くの方がご存知だと思います。
この結果、地方の積算の出るRC物件がサイゼリアのドリアのような勢いで売れていました。

この債務超過の定義は非常に有名なのですが、私個人の経験として、実はあまり銀行から
聞く機会は無いように思います。
ごく一部の銀行は確かにこの観点を大変重視していますが、それ以外の銀行からは
あまり聞きません。

すでに保有している物件を積算で評価し直す銀行は確かにありますが、積算で物件を
再評価して、債務が大きければ絶対に融資できないという銀行は、それほど多くない
印象があります。

キャシュフローの毀損

銀行から聞く債務超過として、最も多い定義が実はキャッシュフローの毀損です。
銀行はキャッシュフローの毀損とは言いませんが、話を聞いているとそのように
見ているようです。

例えば、築30年の木造物件を30年返済の融資を組んで購入した場合を考えてみましょう。
物件自体は土地の積算以下で購入できたとします。

これだと、一見すると債務超過ではありませんが、それはあくまでバランスシートのみの
話であって、キャッシュフローは毀損している状態になります。

なぜそう判断されるのでしょうか?

それは、銀行は、物件からの収入は建設から法定耐用年数内しか生じないと見るからです。
つまり、築30年の木造物件は、法定耐用年数の22年をすでに超過しているので、
銀行としてはそのアパートからは収入が生じないと見るわけです。

一方で、30年返済の借り入れは法的に存在しているので、その元利の支払いは生じる
とされます。

するとどうなるでしょうか?

30年間も収入がないのに、支出だけある状態になってしまうわけです。

そもそも家賃収入から借入金を返済するのが大前提なのに、その家賃収入だけゼロに
されてしまうと、キャッシュフローが大赤字になることはおわかりいただけるでしょう。

これが、キャッシュフローが既存してしまったという意味です。

もちろん、その築30年のアパートからは間違いなく家賃収入が生じているでしょう。
しかし、銀行はその現実を無視します。審査上、家賃が生じないとみなされるのです。

これは、おそらく銀行の独自基準ではなく、金融庁の指導なのでしょう。
多くの銀行でこの考え方が共通しているためです。

この状態は、法定耐用年数を超過したような物件に、長期の融資をつけた場合に発生します。

最近はあまり見なくなりましたが、高属性の人がフルローンでバシバシ物件を購入
できていたのは、サラリー収入でこの物件の赤字を相殺できるという建前があったからです。

毀損してもダメというわけではない 結局は銀行次第

この債務超過については、銀行は概ね同じように考えているようです。

しかしながら、全てが杓子定規にそう考えるわけではありません。

上記のような毀損状態になった方でも追加で融資を受けているケースは
よく聞く話です。

これは、結局のところ、融資審査が機械的に行われているのではなく、
担当者の能力ややる気、その上席の積極性、銀行としての方針や、
支店や担当のノルマの消化状況に大きく左右されるためでしょう。

実際、銀行員も実際に家賃が生じているところをゼロとみなす基準の現実離れ
ぶりは理解しているので、その点をなんとかカバーできないか頑張ってくれる
ことは多いのです。
不動産鑑定評価で経済的耐用年数を算出するなどはその典型です。

また、銀行の見方に従って行動することが常に正しいというわけではありません。
あくまで融資を受けやすいということだけであって、物件の運営とは関係ありません。

上記のような毀損状態を避けるためには、結局のところ地方の高積算で築浅のRCを
購入するしかないという結論に達しがちです。
首都圏の好立地にある物件で、債務超過に陥らないようなものを見たことがありません。

じゃあ何を買えばいいんだよ!とお怒りの声が聞こえそうですが、銀行がこういう見方
をしていると知った上で、自分の属性と経験の範囲内で行動していくしかありません。

まずは銀行に行きましょう。そして、自分がどのような物件に取り組めるのか確認
するのです。

銀行の融資審査が全く画一的ではない以上、試行錯誤しつつ進むしか道はありません。

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