融資の返済方法には、元利均等返済と、元金均等返済があります。
通常、不動産投資では元利均等返済を選択することが多いのですが、
この2つの方法はどのような点で異なるのでしょうか?
少し整理してみます。
元利均等返済とは?
元利均等返済の特徴は、返済額は毎月一定で、その内訳、つまり元金返済と金利支払いの
内訳が変動するという点です。
返済が進むに従って、元金返済が増加し、金利支払いが減少します。
金利支払いと元金返済の割合と、支払総額は以下の表のようになります。
(借入1億円、金利3%の30年返済)
総支払額は最後まで一定です。その一定額の内訳が元金返済により変動し、
金利部分が徐々に減少していきます。
この方法の場合、元金返済が上昇していきますので、この元金返済と減価償却費のバランスに
気をつけなければ、デットクロスに陥り資金繰りに苦労する可能性もあります。
元金均等返済とは?
次に、元金均等返済がどうなるのか見てみましょう。
(諸条件は先程と同じです)
元金均等返済は、毎月の元金返済額が一定になります。このため、毎月の支払額は
一定ではなく、金利の支払いが減少していく分総支払額も減少していくのです。
元金均等返済の特徴は、投資当初の支払金額の大きさです。
当初の10年弱は元利均等返済よりも支払総額は大きくなります。
一方、急速に元金が減少していくため、金利の減少も早く、15年程度で支払総額が
元金均等返済を下回ります。
最初はキャッシュフローがとてもキツイのですが、後で楽になるのが
元金均等返済の特徴です。
投資成果への影響と使い分け
それでは、物件を10年間保有するとして、元利均等返済と元金均等返済は
投資成果にどのような影響をあたえるのか見てみましょう。
前提は、表面利回9%、1億円金利3%です。保有10年で1億円で売却。
元利均等返済より元金均等返済のほうが、10年間の累計キャッシュフローは若干有利
であることがわかります。
これは、元利均等返済のほうが金利負担が少ないことによります。
元金均等返済は元金返済のスピードが早いので、金利負担も軽くなるのです。
では元金均等返済の方が良いのかというと、そういう訳でもありません。
毎年のキャッシュフローを見ると、毎年のキャッシュフローが大幅なマイナス
になっていることがわかります。
元金均等返済は、当初の返済負担が非常にきつく、表面利回りが9%程度では
キャッシュフローがマイナスになってしまいます。
ただ、毎年のキャッシュアウトはあくまで元金を返済しているものですので、
売却時にその分を大きく回収できるというわけです。
ここでわかることは、返済方法は元利均等返済を絶対に選ぶというのではなく、
組み合わせにより大きな効果を上げることができるということです。
例えば、既に元利均等返済でキャッシュフローが出が資産価値の低い地方物件を持っている
場合、次に首都圏の資産価値の高い物件を取得し、元金均等返済を採用した場合、
資産価値が無い物件のキャシュフローで資産価値の高い物件の元金を急速に返済する
ということもできます。
資産価値の低い物件だけでは財務状態が悪い状態をなかなか改善できませんが、
資産価値が高く元金の減少の早い物件でこれをカバーできるかもしれません。
とはいえ、元金均等返済を1~2棟程度で採用することは非常に困難だと思います。
いくら売却時点までで見れば有利とは言え、当初数年のキャッシュアウトには
普通耐えられません。
(表面利回りが非常に高ければあるいは採用可能かもしれませんが。)
ただ、保有物件が増え、キャッシュフローがある程度潤沢になってくると、
元金均等返済も非常に有効な財務戦略となります。
この点は、組み合わせで大きな効果を生じるポイントですので、
是非積極的に検討してゆきたいものです。