投資家であれば、部屋の賃貸や保有物件の売却は基本的に
仲介業者に依頼すると思います。
その時に、投資家としては当然高く貸したいし高く売りたいので、
その意識で仲介業者に話をすると思います。
しかし、仲介業者からの回答が以外と保守的というか、無難というか、
そのような回答しかもらえずモヤモヤしたことはないでしょうか?
「頑張ればもっと高く貸せる部屋なのではないか?」
「この場所でその家賃設定は保守的すぎないか?」
「頑張ればもっと高く売れる物件なのではないか?」
このように感じたことのある投資家は多いのではないかと思います。
このような点は、投資家と仲介業者の立ち位置の違いによって
必然的に発生するものと言えそうです。
仲介業者への不満が発生するとき
ここで言う仲介業者とは、部屋の仲介をする「賃貸仲介」や、
物件売買の仲介をする「売買仲介」ですね。
投資家の皆さんは、日頃からこの仲介業者と付き合われていると
思います。
その中で以下のような経験は無いでしょうか?
投資家:「良い物件が手に入りそうだ。家賃の相場をヒアリングしよう」
投資家:「自分で見たところ、レントロールの家賃は適正くらいかな」
投資家:「これこれこういう場所と間取りなんですが、家賃どれくらいいけますか?」
↓
仲介:「いやー、三点ユニットはきついですよ」
仲介:「駅からちょっと遠いですね~」
仲介:「築年数が古くないですか?」
仲介:「洗濯機置場がベランダか~キツイですね~」
もちろん、都心で新築のRCをエリア最安値で提供できるのであれば
それが一番良いのですが、実際、投資家としては多かれ少なかれ問題の
ある立地や設備や間取りを抱えて経営していかざるを得ません。
文句のつけられないピカピカ物件は資産家の専売ですので。
そのため、本当に聞きたいことは、
「現状でどの程度の家賃がアップサイドで狙えるのか」
「高い家賃を狙うために行うべき施策は何か」
「物件を高値で売却するためにはどうしたら良いのか」
という点なのですが、このあたりがうまく伝わらずもどかしい思い
をすることも多いものです。
投資家と仲介業者の立ち位置の違い
私も上記のようなやり取りは何度か経験したことが有るのですが、
最初は不満でもありました。
しかし、これは投資家と仲介業者の立ち位置の違いから必然的に
生じるギャップであると気づいたのです。
投資家の立ち位置
投資家の立ち位置とはどういう意味でしょうか?
厳密に言うと、不動産賃貸業の経営者としての立ち位置になります。
なぜなら、不動産投資家とは、以下のような仕入れと販売を行っている
経営者そのものであるからです。
まず、部屋を賃貸に出すということはどういうことでしょうか?
これは、部屋という商品を仕入れて、これを売っているのです。
適正な立地や設備を選定し、売れる部屋を仕入れているということ
なのです。
考えてみれば当たり前ですね。
不動産投資は外注が可能と言っても、部屋という商品を仕入れたのは
投資家自信ですし、それを売っているのも投資家自身なのです。
そう考えると、投資家つまり経営者の思考回路とは、
「安く仕入れて高く売る」
という一点に尽きるでしょう。
つまり、不動産投資家はできるだけ高く部屋を貸したいのです。
なぜならば、不動産投資家は部屋を安く買って高く売るという
経営を行っている経営者だからです。
これは、物件そのものの売買に関しても同じです。
基本的には、安い物件を買ってきて、それを極力高値で売りたい
という立場に立っているということです。
仲介業者の立ち位置
では、仲介業者の立ち位置はどのようなものなのでしょうか?
一般的には、不動産投資は多くの業務を外注できるので、
一般人にも取り組みやすい、ともすれば不労所得のような
印象を抱いている方もいるかも知れません。
しかし、その外注先である仲介業者は実は投資家と同じ方向
を向いているわけではないのです。
仲介業者の仕事とは、そのものズバリ仲介することです。
つまり、売りたい人と買いたい人を結びつける、マッチングが
仕事と言えるでしょう。
また、仲介業者はこのマッチングで売上を上げなければなりませんし、
ノルマを負っていることが普通です。
であれば、「頑張ってやっと1件マッチングできる」というものよりも、
「別に頑張らなくてもマッチング出来る」という商品のほうが、
はるかに取り扱い易いという点は、ご理解いただけるでしょう。
つまり、仲介業者とは、「頑張って相場より高く売る」という意思を
基本的には持っていないのです。
高いものはそれだけ売りにくいのです。
であれば、品質が良くて安いもののほうが、マッチングさせやすいので、
そちらのほうが好まれるということです。
結果として、仲介業者は「苦労しなくてもマッチングできる価格」を
基本的に意識しています。
頑張って1件マッチングさせても、頑張らず自然とマッチングしても、同じ1件
の仲介手数料なのですから、どちらがありがたいかは一目瞭然です。
このため、賃貸仲介であれば、部屋の家賃は「無理せず決まる家賃水準」
を常に投資家に提案します。
また、売買仲介であれば「無理せず決まる売却価格」を常に投資家に提案
することになります。
実は、頑張ればもっと高く部屋を貸せたかもしれませんし、もっと高く
物件が売れたかもしれません。
しかし、その高く売ったことにより、仲介業者に入る仲介手数料はほとんど
変わらないということが現実です。
頑張って1件仲介するより、頑張らずに2件仲介したほうが儲かるのです。
投資家は経営者 ハンドリングしていく必要がある
同じ方向を向けるように仕向ける
このように、「高く売りたい投資家」と「高く売りたくない仲介」の
間には、根本的に利益相反関係があるといえます。
同じ方向を向いていないのですね。
このため、投資家は、仲介業者が高く売るインセンティブを持っていない
という点をまずは認識しましょう。
その上で、どうすれば仲介業者が高く売ってくれるのか、考える必要
があります。
それには、「これなら高くても売れるかも・・・」あるいは、「高く売ったら
自分も得をするかも」という期待を仲介業者に抱いてもらう必要があるのです。
まず、部屋を高く貸すという点を考えてみましょう。
まず、設備や室内雰囲気を良い状態に仕上げ、また、家賃の設定を
劇的に誤っては無理があるでしょう。
一方で、頑張って1案件決めたら2案件決めたくらいもうかる
という状態を作るのも非常に効果的ですね。
これは、一般的にはAD、広告費と呼ばれますが、家賃を相場よりも
高く設定したい場合は必須でしょう。
また、賃貸仲介の担当者に商品券などのバックを出すことも良く
あるようですね。
物件の売却で考えてみるとどうでしょうか。
実は、買取再販業者などの業者は、仲介手数料に加えてさらに報酬を
支払っている例も少なくありません。
通常の仲介手数料3%に加えて、コンサルテティング報酬などの名目で、
物件価格の3%を追加で支払っていることもあります。
つまり、買取再販業者も物件をできるだけ高く売りたいので、仲介
業者に頑張って高く売って欲しいのです。
そのため、手数料を都合6%払うと、1件の仲介で2件仲介したのと
同じ成績を挙げられるように配慮しているのですね。
まさに、仲介業者に自分と同じ方向を向いてもらうための手段と言えます。
このような施策により、投資家と仲介業者が同じ方向をできるだけ
向けるようにするのです。
ケンカするのは愚の骨頂
良く聞く失敗大家さんの事例は、仲介業者とケンカをしてしまう
人です。
「なんでこの値段で決められないんだ!おれは客だぞ!」
と言ってしまうともう最悪ですね。
先程書きましたが、そもそも投資家と仲介業者は同じ方向を向いている
わけではありません。
この方向性、つまり立ち位置の違いはケンカしたところでなくなりませんし、
むしろ拡大してしまうでしょう。
利害関係の一致しない相手を叱りつけて言うことを聞かせる事はできません。
その点、経営者たるもの良く理解しておきたいものですね。